研究課題/領域番号 |
17K13523
|
研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
十川 陽一 山形大学, 人文社会科学部, 准教授 (70738509)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 平安時代 / 在地秩序 / 律令官人制 / 刀禰 |
研究実績の概要 |
本研究課題の目的である、官人身分が平安時代の地方社会において果たした役割を明らかにするため、当該年度は、①文献収集も含めた研究史整理、②『平安遺文』収録の古文書を中心とした史料収集と整理を実施した。①については、これまでの収集から漏れていたものも含めて、中世初期までの先行研究を収集し、研究史への理解を深めつつ、問題点などを整理した。②について、今年度は主に9世紀までについて網羅的に収集し、分類・整理を行った。本研究課題では中世史への接続も展望することを目指しているが、研究史整理の結果、まずは9世紀までの理解を固めることが急務と考えたため、当該年度は9世紀までを中心に実施した。 なお、これらによる成果は今後公表してゆくが、次年度に進める予定となっていた“刀禰”(平安時代の在地有力者が名乗る身分の一つ)の具体的検討への足がかりをなすことができた。 また本研究課題では、全国的な動向の検討に加え、東北地方を主なフィールドとした地域的な視点も取り入れ、比較を実施する計画となっている。これについて、東北地方と律令官人制の大まかな関係を把握するため、論文1本(十川陽一「律令官人制と古代の東北」、新川登亀男編『日本古代史の方法と意義』勉誠出版、2018年)として成果を公表した。東北地方は、国造制などの前段階を経ずに律令官人制が導入された地域も多く、地域の人々と律令官人制の関係がより明確に見出せる地域と考えられる。本論文の成果でも、他の地域では官職が中心となって受容される傾向にあるのと異なり、東北地方では位階という身分標識が中心となって受容されることが明らかとなった。 なお、官人制と関わる出土文字資料の収集についても、順次検討を始め、古文書や文献史料から見えてくる姿との比較へ向けた準備を進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」に記載した、研究史整理、史料収集・整理、成果発表、出土文字資料の収集について、いずれも研究計画段階から予定していた計画の通り、遂行することができた。
|
今後の研究の推進方策 |
当該年度の成果により、先行研究における問題点や残された課題の洗い出し、および、それらに基づいた史料整理と検討が実施できた。これを踏まえ、次年度以降は個別史料の詳細検討を実施し、まずは9世紀までの在地社会における官人身分の意義、ならびに在地有力者としての“刀禰”身分との関係について明らかにしてゆくことが目前の課題となる。 またこの他、当該年度では10世紀以降の史料については、おおまかな収集・整理のみの実施にとどまっている。この点についても、次年度以降順次進めてゆき、古代~中世の接続も見通した議論への展望を得ることを目指す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新刊図書などの購入により、当初の計算と異なる支出が発生したため、若干の残額が生じることとなった。当該年度の支出として適切な物品等がなかったため、次年度助成金と合わせ、図書や消耗品、あるいは旅費の支出に充ててゆく計画である。
|