研究課題/領域番号 |
17K13525
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
林 晃弘 東京大学, 史料編纂所, 助教 (10719272)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 寺社政策 / 朱印地 / 徳川家光 / 寺社奉行 / 寺院法度 / 本末制度 / 寺社興隆 |
研究実績の概要 |
平成29年度の家光政権前期を中心とする検討につづき、30年度は特に家光政権後期(寛永末~慶安期)における寺社政策の分析に取り組んだ。また、大名家における同時期の対寺社政策・交渉についても検討を加えた。 主な成果としては、第一に、平成29年度の調査・研究をもとに、家光政権初期を中心に扱った論文「徳川家光代始の寺社政策と宛行状発給」(『古文書研究』85号、2018年7月)をまとめた。徳川秀忠没後、実質的な代替わりとなった家光政権による寺院法度の調査、末寺帳の徴収、寺社の興隆、継目朱印について、これまで利用されてこなかった史料を組み込みつつ、事実関係を明らかにした。第二に、平成30年度の調査・研究により得られた知見をもとに、研究ノート「肥後細川家と天龍寺真乗院・細川紹高家」(『永青文庫研究』2号、2019年3月)をまとめることができた。これは近世後期の成立ではあるが、17世紀前半の書状や日記の写しを含み、近世前期の幕藩領主と寺社との関係がよくわかる良質の史料について、類本との関係など基礎的な分析を加えたものである。この他、近世の菩提寺の成立についての研究にも取り組んだ(成果を含む出版物は31年度中に刊行予定)。また、「史料・文献紹介 宇高良哲編『南光坊天海関係文書集』」(『歴史学研究』970号、2018年5月)は、新刊紹介ではあるが、天海発給文書に関する新しい知見を盛り込んでいる。 上記の研究活動のため関連史料調査を行った。主に科研費を利用したものとしては、国立歴史民俗博物館(千葉県佐倉市)、賀茂別雷神社、京都府立京都学・歴彩館、京都市歴史資料館(以上京都府京都市)、神宮文庫(三重県伊勢市)、成菩提院(滋賀県米原市)があり、国立国会図書館、国立公文書館等においても、必要な史料・文献を収集した。この他、関係する学会等に出席し、必要な書籍等を購入した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度・30年度の研究により、家光政権前・中期について新たな知見を踏まえつつ研究成果をまとめることができている。史料調査についても、他の科研費による研究とも連携しつつ、これまで十分に利用されていない多くの史料を調査し、一部を研究に利用している。また、調査史料についての基礎的な紹介も行っている。 当初の幕府と寺社の関係を中心とした研究計画に、平成29年度の研究で得られた知見をもとに大名家と寺社という要素を加えたことで、当該期の寺社政策をより総体的にとらえる見通しを得ている。一方、家光政権期の朱印状発給の全体像については、おおよその傾向が判明していることから、今後はその背景や目的等の分析に進みたい。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度にはこれまでの調査・研究をもとにした学会発表・論文発表を予定している。特に、(1)家光政権期に成立する江戸幕府寺社奉行についての基礎的な検討、(2)本末相論と幕府の対応、(3)慶安年間における寺社に対する朱印状の大量発給などが論点となるものと考えている。これまで調査・集積してきた史料の分析を進め、未調査の史料を組み込みながら、研究を進める。 また、これまで調査してきた史料について、史料紹介等の基礎的な成果の発表にも取り組む予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度後半に予定していた出張の一部に、当該科研費を利用しなかったため。 31年度は、学会発表やその準備のために旅費が必要であり、それに充てる予定である。
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