研究課題/領域番号 |
17K13527
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
加藤 諭 東北大学, 学術資源研究公開センター, 准教授 (90626300)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 日本史 / 都市史 / 教育史 / 経営史 / 社会経済史 |
研究実績の概要 |
本年度(平成30年度)は、引き続き仙台を中心に、東北地方他都市の事例も検討しながら「多目的催事空間」の比較分析の進展を図った。具体的には、 (1)宮城県公文書館所蔵の行政文書等から、宮城県内の公会堂関連の文書の所在について確認するとともに、隣接都市である岩手県公会堂、山形県商品陳列所、福島市公会堂の催事についても、各所発行の年報や年史、地方新聞から1930年代の状況を抽出した。また上記に加えて公園など野外空間での催事についても調査対象を広げ、屋内・屋外における催事機能の分析を行った。 (2)前年に続き、斎藤報恩会会館講堂について、東北大学史料館に2015年度に寄贈された斎藤報恩会関係文書を分析し、年報等の史料のほか、研究助成と成果公開に関する資料にも分析対象を広げ、研究成果公開との相互関係にも着目しつつ、1930年代における斎藤報恩会の催事やデータベース化を進めた。 (3)また、前年に続き仙台の地場系百貨店である藤崎の催事開催内容に関するデータベース化を進め、合わせて隣接都市である、岩手の川徳・松屋、山形のミツマス、福島の福ビル・中合など、地方都市における百貨店、百貨店式経営商店の1930年代における経営戦略・文化催事について検討を行った。 これらの成果の一部は、2018年10月の東北史学会における「1930年代の盛岡における多目的催事の変遷~公会堂から百貨店へ~」の学会報告、また共著、谷内正往・加藤諭『日本の百貨店史 地方、女子店員、高齢化』(日本経済評論社、2018年)の成果公開に結実した。 さらに、旧帝国大学内における講堂空間での催事展開に関する資料の残存状況について、全国的な把握を試みるべく、東京大学文書館での史料調査を行うとともに、大学アーカイブズにおける展示催事と大学アーカイブズの成立過程について論文化を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度(平成30年度)は仙台における研究環境を活かして、本来分析対象都市に加えて東北地方各都市にも分析対象を広げるとともに、屋内空間にとどまらない屋外空間における催事機能への分析視覚を踏まることで、研究が進展した。 また引き続き大学アーカイブズ機関に所属することで、近代における学術的な催事の実相を分析する上での、史料へのアクセスについて、最適な環境が担保された。その結果、当初予定していた史料調査、分析は順調であり、研究成果については学会報告のほか、その成果として学術書の刊行も行うことが出来た。予定通りの進捗であるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、平成29年度、平成30年度にかけて進めてきた「多目的催事空間」の個別分析の結果について総体的考察を行うこととする。 (1)公会堂に関する分析を個別事例に留めず、地方都市空間における百貨店や公園など屋内外催事空間との機能分化・連動性に視点を広げるとともに、東京などの大都市の大学や公的機関の講堂機能とも比較することで、近代における「多目的催事空間」の分析を深化させる。 (2)東北大学史料館所蔵の斎藤報恩会関係文書の催事記録や年次報告書を通じて、各年度の催事のデータベース化を進めるとともに、東京帝国大学の大講堂(安田講堂)など、大学における学術的な講堂機能との比較分析を行い、近代日本における学術催事の実相解明を行う。 (3)藤崎などの地場系百貨店や、三越など中央百貨店との催事分析、またそれらが立地する隣接都市での「多目的催事空間」の形成と役割、および波及について抽出し、全国的視野に立った近代日本における催事の歴史的特質を実証的に明らかにする。 以上の研究成果を、国内外学会等での発表や、論文化を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由として、本年度(平成30年度)は研究代表者が本来想定していた出張計画が所属の隣県に比重が置かれたことで抑えられたことや、物品費については所属機関の研究環境を活用することが出来たことから、相対的に抑えられたことがあげられる。 一方次年度は、研究の最終年度に当たり、研究とりまとめのための必要な物品、旅費、人件費・謝金についての支出が見込まれること、また成果公開に向けた作業において人件費・謝金の比重が高まることが予想されることで、次年度使用額の適切な支出を計画している。
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