本研究の目的は、近現代沖縄における観光業の主要産業化過程について、先行研究によって示された「沖縄イメージ」論にとどまらない形で、経済開発全体との関連を重視して歴史学的実証に基づき検討することである。最終年度となる今年度は、これまでと同様、広範な史資料収集を行うとともに、申請時に設定した時期区分に基づき、「1960~70 年代の主要産業化期」についての検討を行った。そして、3年間の研究成果をふまえて、一書としてまとめるための準備を進めた。 広範な史資料収集としては、沖縄県公文書館、沖縄県立図書館、琉球大学附属図書館、国立国会図書館、外務省外交史料館などにおいて、研究課題に関する文献・文書等の収集に努めた。また、沖縄近現代史関連の史料集の購入も進めた。 雑誌論文としては、次の2点を発表した。「1960年代の沖縄観光について―観光行政の確立過程と観光開発構想の変容―」(『沖縄文化研究』47、2020年3月)では、1960年代を通して沖縄における観光行政が確立していく過程、および、そのなかで観光開発構想がどのように変容していくのかを明らかにした。「1970年代における沖縄の観光政策について」(『歴史研究』57、2020年3月)では、1970年代における沖縄の観光政策について、復帰/返還前後における経済計画、および、法制度の一元化のなかで課題とされた「観光売春」対策を通して、その変容過程を明らかにした。 これにより、既発表論文と合わせることで、「1930~40 年代前半の模索期」、「1950 年代の草創期」、「1960~70 年代の主要産業化期」を通観した、近現代沖縄における観光業の主要産業化過程を明らかにすることができた。
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