研究課題/領域番号 |
17K13532
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
中川 未来 愛媛大学, 法文学部, 准教授 (60757631)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | アジア主義 / ナショナリズム / 食塩 / 野﨑武吉郎 / 八木亀三郎 / 東邦協会 / 東亜同文会 / 興亜会 |
研究実績の概要 |
本年度は、研究課題A「八木亀三郎関係資料からみる近代愛媛の地域像」、B「明治中期のロシア貿易構想と地域社会」、C「近代日本の北洋漁業構想とナショナリズム」のうち、Bに関する成果、およびCの前提となる成果をまとめ、Aに関する資料収集を継続した。 まず本助成の採択後、八木家の関係史料(現在個人蔵)が発見され、関係者による調査が開始された。本年度は現所蔵者の許可を得て当該史料の一部を調査したが、検討を進めていくうちに八木の活動が広く1870-90年代の瀬戸内塩業者による中国、朝鮮、ロシア沿海州への経済的進出のなかに位置づくことが明らかとなった。 そこで本年度は、食塩輸出運動の中心人物たる岡山県児島郡味野村(現倉敷市児島)の大塩田地主・野﨑武吉郎(1848-1925)の旧蔵文書(現在は野﨑家塩業歴史館蔵)を主史料として八木亀三郎を含む瀬戸内塩業者による食塩の直輸出運動を検討することにし、とりわけ運動の推移とその歴史的性格を把握することに努めた。 また本年度に八木家の関係史料を収蔵する「八木本店資料館」(愛媛県今治市波止浜)がオープンしたことを受け、当該史料の調査研究にあたっている関係者と連携し、同史料の調査を継続した。 以上の成果は、各種学会にて口頭報告し、また論文「明治期瀬戸内塩業者の直輸出運動とアジア」(『史林』102-1、2019)、「雑誌『国光』の創刊と吉井友実」(『愛媛大学法文学部論集人文学編』46、2019)、「『大阪朝日新聞』と高橋健三」(中野目徹編『近代日本の思想をさぐる』吉川弘文館、2018)などとして公刊した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、本研究の核となる瀬戸内塩業者のアジア進出に関するまとまった成果を査読付論文として公刊した。また史料収集に関しても、関係者の多大なご助力により非公開史料へのアクセス権を確保することができた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、本研究課題の最終年度となる。 本研究ではすでに上記A-Cの3課題を推進するための基礎となる史料収集を着々と進めており、また研究結果の方向性を確認するための中核となる重要な成果を公刊することができた。 今後は、これまで得られた成果を総合して、地域社会とアジア主義、ナショナリズムの具体的な関係を1900年代以降も視野に入れて展望しうる成果の発表準備を進める。 さらには収集した史料の情報を成果物として公開し地域に還元するために、史料所蔵者や関係者の協力を得ながら史料目録や史料翻刻の公刊を進めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、本研究計画の中核となる瀬戸内塩業者のアジア進出に関する成果を公刊することに注力したため、近接地域での史料収集を主とし、北海道など遠隔地での史料収集を見合わせた。 次年度には本年度に得られた成果をもとに研究を完成させるために、北海道など遠隔地での史料収集を実施する計画である。
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