研究課題/領域番号 |
17K13534
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研究機関 | 国際基督教大学 |
研究代表者 |
OLAH Csaba 国際基督教大学, 教養学部, 上級准教授 (70646380)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 入明記 / 対外交流 / 唐物 |
研究実績の概要 |
2019年度は、日中双方の史料を講読し、本研究課題にかかわる事例を収集した。日本史料は、五山僧の日記や京都の貴族・寺社の日記を講読し、中世社会における唐物流通および遣明船貿易を支えてきた資金提供者や商人・禅僧に関する情報を収集した。中国史料は、官貿易・民間貿易の管理体制、日明貿易の実態に関する事例を収集した。 これらのテーマに関連する先行研究も網羅した。例えば、中国の商業・流通環境がどのようなものであったのかについて、江南都市の商業史や牙行の仲介業、浙江・広東沿岸での密貿易といった論点を中心に、先行研究を調べてきた。さらに、禅僧の対外貿易との関係、禅寺における唐物の管理、禅寺における目利きとしての禅僧、禅僧の中国美術に対する憧憬、室町将軍所有の唐物の恩賞としての使用といったテーマを中心に、史料および先行研究を整理・分析した。本研究の主体的な史料である入明記およびその関連史料を分析し、遣明使節による官貿易と民間貿易の実態および唐物入手の詳細について考察した。 これまでの研究の成果として、年度内に単著の執筆を終える予定。そのなかで、日本使節の中国での貿易活動、およびその活動の背後にある中世経済との連関を明らかにすることを目的にしており、これまでに本研究で調査した史料や取り上げてきた論点を盛り込んでいる。さらに、前年度は、『明代の日中文化交流史』という出版予定の編著の一部として、日明貿易の実態について執筆を開始した。 前年度は、「EAJS(ヨーロッパ日本研究協会)」の国際学会で報告するための準備も行った。この報告は、歴史学パネルの報告として採択はされたが、コロナ感染拡大防止のため、学会が来年度に延期になった。 また、前年度は、今年度のサバティカルの準備を進めてきた。Leuven大学(ベルギー)で、連携研究者と共同研究を行う予定だったが、コロナ感染拡大の影響で渡航は未定。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日本・中国の史料は、データ収集が当初予定していた順番と若干異っているが、かなり進んでいる。欧文史料は、ポルトガル人の東アジアへの到来に関する典籍のみを調査してきたが、研究全体はおおむね当初の研究実施計画に沿って進んでいる。史料から抽出した事例が増えてきたため、本研究のなかでこれまでに取り上げてきた論点に沿って分析と整理を開始し、これらの論点を先行研究と照合した。史料と先行研究の総合的検討を経て、日本使節およびその背後にある人的基盤、唐物流通と中世経済という新たな視角から、遣明使節の貿易活動の再検討を進めているところである。そのためには、今年度の前半あたりまで、史料・先行研究からのデータを収集・分析し続ける必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
日本使節の中国での貿易活動については、史料および先行研究をすでにかなりまとめてきたが、今後特に必要なのは、中世経済史研究の視点から、遣明船貿易を検討すること、これまでに収集してきた史料をもとに、中世日本における唐物消費・唐物流通について明白にすることである。関連研究の蓄積が厚いため、先行研究についてはさらに調査し、論点整理を続ける。当初の研究実施計画に沿ってさらに若干の史料収集を進め、海外貿易と国内経済との連関を示す史料事例を集め、データを整理する。これらの分析・整理作業と並行して、単著の執筆を終える予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
デスクトップパソコンにかかる費用が想定より安く、さらに購入予定の中国史料の一部がネットのデータベースでアクセスが可能になったため、次年度使用額が生じた。
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