〈基幹的研究〉では、本計画の基盤となる課題(1)、すなわち「筑豊文庫資料」の調査・整理作業について、当初予定していた分の整理作業を終え、目録(仮)を作成することができた。整理した資料の総数量はコンテナ約120箱分、約5300件となっている。一方、課題(2)・(3)の一環として実施している関係者からの聞き取り調査の過程で、現在、直方市が管理している分以外に、「筑豊文庫資料」の一部を構成する未整理資料が、まとまって存在していることが確認された。その分量は段ボールにして約20箱分となり、資料全体の性格にも影響を及ぼす分量であるため、新たに発見された未整理資料の調査と内容の確認作業を、前記整理作業と平行して実施した。時間的な制約などから、既整理分と同水準での整理作業はできなかったが、おおよその内容を把握することができた。 次に、課題(2)については、「筑豊文庫資料」に含まれる特徴的な資料の内容把握・検討を進めた。具体的に検討の対象としたのは、個別の炭鉱企業に関する資料、上野英信に贈られた各地の文学サークル等の刊行物、炭鉱関係者からの聞き取り記録などである。 〈発展的研究〉に位置づけた課題(3)については、①〈基幹的研究〉、特に課題(1)の完遂を優先したこと、②計画当初の目論見と異なり、「筑豊文庫資料」には上野英信が自ら作成した資料(手記や草稿類)がほとんど含まれていなかった、という2つの理由により、十分な成果を挙げえなかった。しかし、本課題の一環として継続した関係者への聞き取り調査の成果として、先述の通り、新たに未整理資料の存在を確認することができた。
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