| 研究課題/領域番号 |
17K13541
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| 研究機関 | 公益財団法人三井文庫 |
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研究代表者 |
下向井 紀彦 公益財団法人三井文庫, 社会経済史研究室, 主任研究員 (70625657)
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| 研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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| キーワード | 三井越後屋 / 山陰 / 島根 / 鳥取 / 木綿 / 鉄 |
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| 研究実績の概要 |
本研究は19世紀以降の藩境域において如何なる経済活動・交流があり、また中央市場との関係のなかで如何に変容していったのかを明らかにするものである。主に木綿・鉄の生産・流通を事例として①出雲（島根）東部と伯耆（鳥取）西部（以下、「雲伯」）の在地商人史料の調査・収集・整理を行って、雲伯地域で展開していた経済活動の具体像を明らかにし、②在地商人の史料と三井越後屋の史料から雲伯商人と中央市場との取引関係の具体像を明らかにし、③これらの経済活動に対する双方の藩権力の関与や統制の具体像も踏まえて、境域における経済活動の全体像を明らかにするものである。
平成30年度は島根の史料調査・収集を重点的に行った。本年度は島根県立図書館郷土資料室、島根県立古代出雲歴史博物館で史料調査を複数回実施し、島根における商業活動・流通に関する史料の撮影・整理・翻刻作業等を行った。また、三井越後屋の雲州木綿の仕入拠点であった出雲市平田で、雲州木綿関係史料の調査を実施し、個人宅において史料状況の把握や聞き取りを行った。なお、島根県立古代出雲歴史博物館では調査の一環として、木綿商人に関する史料整理・目録作成にも協力した。以上の調査で収集した史料・文献を読み込んで、出雲地方における木綿商人の活動や町方の商業政策の実態解明に向けた研究を進めた。また、出雲産品として木綿とともに重要な鉄に関する史料調査も新たに実施した。鉄については奥出雲において史料調査を実施し、生産・流通に関する史料の撮影・整理・翻刻作業等を行った。
これらの成果は、昨年度に引き続き本研究を進めていくための重要な基礎作業であり、次年度以降の史料調査と研究の方向を定めるものともなった。
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度は、主に島根の史料調査・収集と収集史料の分析を重点的に行うことができた。島根県立図書館郷土資料室の所蔵する史料のうち、主に在地商人の経済活動に関わる史料を中心に写真撮影・整理を行い、調査した史料の翻刻を進めた。島根県立古代出雲歴史博物館では、所蔵史料状況の把握や史料目録の整備状況を確認でき、今後の調査を進める上で大いに参考となった。また、同館所蔵史料の整理・目録作成作業に協力しつつ、本研究課題に関連する史料の撮影・整理を行い、史料の翻刻作業を進めた。本年度は木綿とともに出雲の重要産品である鉄についても新たに史料調査・収集を行い、領外移出用の鉄の生産・輸送等について検討する素材を得ることができた。
なお、三井文庫所蔵の木綿仕入に関する史料については、前年度に引き続き整理および入力の作業を進めた。これらの成果に基づき、三井越後屋の買宿（現地で木綿仕入れを行う）に関する新たな知見をまとめて、『三井文庫論叢』において発表した。
上記のように本年度は昨年度に引き続き島根県域での史料の調査・収集・整理を計画通り進めることができた。次年度は本年度の成果を踏まえて、他の博物館等の研究機関の所蔵する史料や個人蔵の史料などにも幅を広げて調査を行い、昨年度・本年度の調査結果も踏まえた分析を本格的に行っていく予定である。
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| 今後の研究の推進方策 |
来年度は昨年度・本年度と同じく調査・収集活動を継続して行い、新たな史料の発見を目指す。同時に、これまでの調査・収集の成果を踏まえて分析を進めていき、研究成果の発表を行う。
鳥取に関する史料調査・収集については、昨年度・本年度に調査することができなかった鳥取県立博物館と鳥取県立公文書館の史料調査・収集を進め、収集した史料の整理と分析を行う。島根に関する史料調査・収集については、これまで調査できていない島根大学附属図書館、松江歴史館など史料所蔵機関での調査を行いつつ、個人蔵の史料についても史料調査・収集を行う。また鳥取・島根の境域にある安来の史料の状況把握・情報収集を行い、もし史料があれば新たに史料調査・収集を行う。これらの史料調査においては、昨年度・本年度に引き続き、史料所蔵状況の全体像を把握しながら、特に商業関係史料に力点を置いて幅広く史料を収集する。この中から、鳥取・島根の木綿や鉄などの産品の生産・流通に関する史料を抽出する。また、他の史料についても整理を行いつつ、少しでも関連しうる内容があれば吟味して研究に利用する。三井文庫所蔵史料については継続して整理と史料翻刻作業を続ける。ここでは現地での木綿仕入のみならず、輸送や加工に関する越後屋の活動も視野に入れて作業を進めていく。また、関連する地方史関係文献の収集・複写も継続して行う。
これらの成果を踏まえて史料を読み込んで分析し、地方における経済活動、上方への産物移出、地方商人と上方商人との関係について、木綿や鉄を事例に可能な限り具体的に検討し、研究成果としてまとめる。
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| 次年度使用額が生じた理由 |
この次年度使用額は、史料調査の旅費として想定していた金額に対して、実際の金額が若干少なかったため生じた。これについては次年度の史料調査旅費に充当する予定である。
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