本研究は19世紀以降の藩境域において如何なる経済活動・交流があり、また中央市場との関係のなかで如何に変容していったのかを明らかにするものである。主に木綿の生産・流通を事例として①出雲(島根)東部と伯耆(鳥取)西部(以下、「雲伯」)の在地商人史料の調査・収集・整理を行って、雲伯地域で展開していた経済活動の具体像を明らかにし、②在地商人の史料と三井越後屋(以下、三井)の史料から雲伯商人と中央市場との取引関係の具体像を明らかにし、③これらの経済活動に対する双方の藩権力の関与や統制の具体像も踏まえて、境域における経済活動の全体像を明らかにするものである。 令和元年度は前年度に引き続き島根の史料調査・収集を重点的に行った。本年度も島根県立図書館郷土資料室で史料調査を複数回実施し、島根における商業活動・流通に関する史料の撮影・整理・翻刻作業等を行った。以上の調査で収集した史料・文献を読み込んで、出雲地方における木綿商人の活動や町方の商業政策の実態解明に向けた研究を進めた。また、出雲産品として木綿とともに重要な鉄に関する史料調査も前年度に引き続き実施した。鉄については奥出雲において史料調査を実施し、生産・流通に関する史料の撮影・整理・翻刻作業等を行った。 また、令和元年度はこれまでに収集した近世山陰の木綿流通に関する史料を用いて、山陰木綿の上方への輸送手段・ルート等に関する研究成果を、島根県古代文化センターの研究論集で発表することができた。
|