日本中世において、政治的・社会的・宗教的に重要な位置を占めた寺院では、膨大な史料(古文書・古記録・聖教など)が集積された。本研究課題では、こうした史料を題材として、従来の寺院組織論および寺院史料論の成果をふまえつつ、進展しつつある目録学と寺院史料調査の成果を積極的に取り入れて、新たな寺院史像を再構築しようとした。さらに、寺院組織とその史料管理システムという切り口から分析することで、寺院史料のもつ特質を析出し、寺院史料論の体系化を試みた。とくに、寺院に集積されるアーカイブズへの考察について、寺院の歴史叙述である寺誌に着眼して検討を加えたことは、本研究に独自の観点であるといえる。
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