歴史的に重要な意義を持つ国家的修法を研究する上で、聖教を歴史史料として活用することができた。聖教は、仏教の教義や儀礼に関わる特殊な文献資料であり、その内容も難解に思われるため、一般的な古文書や記録史料を用いる歴史研究者からは、敬遠される傾向にある。 古代・中世前期の日本史研究については、文献史料がほぼ発見・研究し尽くされた感があり、まとまった新史料が登場することは希有な事例となっている。しかし、本研究を通じて、聖教には仏教学・宗派史学という分野以外に、通史的仏教史、政治史的観点からも活用の可能性があることを広く示すことができたと考えている。
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