研究課題/領域番号 |
17K13553
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研究機関 | 神戸市外国語大学 |
研究代表者 |
西田 愛 神戸市外国語大学, 外国学研究所, 客員研究員 (90723693)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 古代チベット / 古チベット語文献(Old Tibetan) / 占い / ラダック / ザンスカル / チベット古代宗教 |
研究実績の概要 |
研究初年度にあたる平成29年度の前半には、本研究の中心となる古チベット語文書のテキストデータベース作成に取り組んだ。特に、これまでにテキストデータが発表されていない古代宗教に関わる文献や初期の仏教伝道者たちが仏教の布教に用いたと考えられる文献テキストのデジタル化を進め、その解読と翻訳に取り組んだ。具体的には、『置換』、『神国道説示』の2点について、異本も含めて網羅的に研究を進めた。 また、古チベット語占い文書の中に使用される一連の未解読語彙についても検討を行った結果、これらの未解読語彙のもつ音節構造などの特徴から、古シャンシュン語との関連がうかがわれることがわかった。この知見については、2017年9月7~8日に神戸市外国語大学において開催された国際シンポジウムInternational Seminar on Tibetan Language and Historical Documents上で口頭発表を行った。 さらに、平成29年度の後半には、インド、ジャンムカシミール州に位置するラダック及びザンスカールにて、占いの実地調査とテキストの収集を行なった。ラダックのピャン・ゴンパ(ディグン派)、ザンスカルのサニ・ゴンパ(ドゥク派)、カルシャ・ゴンパ(ゲルク派)では、占いを実施できる僧侶へのインタビューを実施した。そのほか、ザンスカルでは占星術師(ツィーパ)とニンマ派の在家行者からも、占星術や占い、土地神や死霊、生き霊への儀礼について話を聞くことができた。この成果の一部は、2018年3月に臨川書店より公刊された『チベット・ヒマラヤ文明の歴史的展開』(岩尾一史、池田巧編)中にて「チベット語占卜書中の神格 ― その効果と意義についての一考察 ―」として発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、古チベット語文献テキストのデジタル化とその解読、翻訳を順調に進めることができた。また、チベット文化圏での占いの実地調査と占い文献の収集にも取り組み、予定通りに調査を完遂できた。これらの成果の一部を論文として発表することもできたため、研究は概ね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後も、本研究の中心である古チベット語文書の解読を進めていく。昨年度に解読の進展したテキストについては、学会発表及び論文の発表を目指す。また、現代チベット文化圏でのフィールドワークについては、未調査のブターン東部地域にて占いの実地調査及び文献収集を行う。これを通じて、チベット文化圏で現在実施される占いの地域的差異について検討する。
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