研究最終年度である今年度の前半には、古チベット語占い文献のうち「十二縁生祥瑞経」と関わりがあると考えられる4文書について、テキストの解読と分析を行った。次に、それらの古チベット語文献の内容と、チベット大蔵経所収のテキスト、大正新修大蔵経所収のテキスト(漢語)、アーシャアーカイブス所蔵のネワーリー写本テキスト(サンスクリット語)との比較を実施した。古チベット語写本については、解読を通して写本間の異同などの詳細を初めて明らかにすることができた。比較対象とした3文献については、相互間の異動の原因について、古チベット語文書を手がかりに考察を行なった。この成果は、7月にパリで開催された15th seminar of the International Association for Tibetan StudiesにてA divination method according to the twelve Nidanasとして発表した。
年度の後半には、東ブータンのチベット仏教寺院にて現代の占いに関する調査を行なった。具体的には、寺院で実施されているサイコロ占いについて、僧侶へのインタビューと占い文書の収集を行なった。これまでに実施した西ブータン~中央ブータンの調査結果と統合し、ブータンのサイコロ占いの現状報告としてまとめている。
さらに、古チベット語の古代宗教関連文献のうち、「輪廻形態説示」というタイトルで知られる3文書について解読と分析を行なった。その成果は、『通信』43号(日仏東洋学会)上に「敦煌出土チッベト文『輪廻形態説示』―古代チベットにおける初期仏教伝道文学作品―」として発表した(現在出版準備中)。
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