15 世紀、ヨーロッパにおいて東西教会合同運動が盛り上がっていた頃、中東においても、反カルケドン派の東方キリスト教諸教会は互いの連携を強化し、カトリック教会による呼びかけにも積極的に対応していた。本研究は、迫害やペストの影響により弱体化しながらも、中東各地の東方キリスト教諸教会が互助しあうことで生き残っていった様相を、コプト教会を中心に研究した。 2022年度は国際学会や国内のシンポジウムにて、今までの研究の成果報告を行なった。まず7月初旬にフランス・パリで開かれたアラビア語キリスト教学会では、中世のコプト教会文学におけるビザンツ教会の聖人崇敬の影響、その背後にあると考えられるエルサレム郊外のマール・サバス修道院のネットワークについて報告した。その1週間後にベルギー・ブリュッセルで開催された国際コプト学学会では、上記にコプト聖人伝に記された具体的な記述について検討した。8月には、東方キリスト教学会大会のシンポジウム「「東方キリスト教諸教会における「聖なるもの」への崇敬―人・物・場所―」にてアルメニア、ジョージア、現代コプト教会の研究者とともに登壇し、パリの学会で得られた成果について報告した。東方キリスト教学会大会の報告文は学会誌『エイコーン』にて2023年度中に刊行される予定であり、国際コプト学学会の報告論文も近年中に刊行される見通しである。 国際学会会場にて様々な研究期間の研究者と意見交換をすることができたが、これら交流は帰国後もオンラインで続いており、本科研課題の内容を深化させるとともに、次の研究課題につなげることができた。このような点おいて、本年は成果の多い一年であった。
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