研究課題/領域番号 |
17K13555
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
帆北 智子 東北大学, 国際文化研究科, GSICSフェロー (90713214)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ロレーヌ公国 / 貴族 / ネットワーク / 家系分析 / 境域国家 |
研究実績の概要 |
本研究は,18 世紀ロレーヌ公国の貴族層が公国の外部にその社会的,政治的紐帯を広げていきながら,ロレーヌ固有の自己意識を形成し,あるいは強化していったという,一見すると矛盾した歴史現象について,ロレーヌ貴族社会に内在しただろう集団的アイデンティティ観から理解することを目的としている。そのために,本研究では,ロレーヌ貴族(本研究で対象とするのはロレーヌ「騎士団」に属する家門)が,当該期のヨーロッパ国際政治においていかなる役割を担う政治・外交ネットワークを構築し,その背景にロレーヌ貴族がいかなる家系的戦略や政治的な行動原理を共有していたのかという課題を設定している。 したがってまずは,先行研究の整理や史料収集という準備的作業にくわえ,騎士団全体の家系構造を析出したり政治・外交ネットワークを措定したりするための手法も検討する必要がある。本年度はとりわけ,申請書で示したような騎士団全体の家系構造モデルをより精緻に構築するためのツールや方法の模索に注力した。具体的には,パッケージソフトウェアにある家系図作成ソフト各種,ネットワーク分析用ソフトのPajek,統計解析ソフトRにあるigraphパッケージを検討した。結婚によって広がっていくネットワークの形成過程や,樹形図状の単純な全体像を可視化するだけであれば家系図作成ソフトで十分である。しかし,例えば家系構造が内包する社会的紐帯の質や強度などを表現するためにさまざまな指標を利用することを考えるとPajekやigraphの利用がより適しており,さらにネットワーク上の結節点をクラスタリングするといった種々の統計処理を想定すると,より汎用性の高いigraphの利用が現段階では最適と考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
家庭の事情で研究を中断する必要があったため,計画の遂行に遅れが生じた。とりわけ,史料収集のための調査旅行を断念せざるをえず,史料の分析に着手できなかったことは大きい。今後,研究期間の延長申請を検討している。
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今後の研究の推進方策 |
予定どおりの進捗は叶わなかったが,研究計画や研究方法の大幅な変更は必要ないだろう。基本的には,今後も当初の計画に沿って作業を進めていく。昨年度中に着手する予定であった基礎分析Aの作業に取りかかるべく,まずはヨーロッパへの調査旅行を実現させたい。ただし,収集を予定している史料のなかでも所領に関するものは,とりわけ膨大な史料の渉猟が求められることから,対象とする所領ないしは家系をある程度しぼり込む必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究を中断して日本にいる必要があったため,史料収集を目的としたヨーロッパへの調査旅行が叶わなかった。助成金の主用途が調査旅行費であったため,そのほとんどが次年度繰越となった。史料収集はもともと平成30年度も予定していたため,本年度は渡航を複数回するか一度でも長期滞在するかして,計画の遅れを取り戻したい。
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