研究課題/領域番号 |
17K13555
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研究機関 | 創価大学 |
研究代表者 |
帆北 智子 創価大学, 文学部, 准教授 (90713214)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ロレーヌ公国 / 貴族 / 境域 / 領域性 / 定量分析 |
研究実績の概要 |
本研究は,18 世紀ロレーヌ公国の貴族層が公国の外部にその社会的,政治・外交的紐帯を広げていきながら,ロレーヌ固有の自己意識を形成し,あるいは強化していったという,一見すると矛盾した歴史現象について,ロレーヌ貴族社会に内在しただろう集団的アイデンティティ観から理解することを目的としている。そのため本研究では,ロレーヌ貴族(主にロレーヌ大騎士に属する家門を対象)が,当該期のヨーロッパ国際政治においていかなる役割を担う政治・外交ネットワークを構築し,その背景にロレーヌ貴族がいかなる家系的戦略や政治的な行動原理を共有していたのかという課題を設定している。 今年度はこれまでの進捗の遅れを取り戻すべく,当初予定していた分析対象の範囲をかなり絞って作業をすすめた。具体的には,ロレーヌ大騎士に属する家門を広く分析対象としていた点を変更し,そのうちの一家門であるシュワズル家と同家と婚姻関係を結んだ家門に限定したうえで,以下のような分析,考察をおこなっていった。 まずは,およそ 16 世紀から 18 世紀中期におけるシュワズル家の結婚の選択や親族関係の広がりを地域的な側面から整理してその動向を明らかにすることで、境域を主たる拠点とした貴族家門の領域性について考察した。次いで,先の考察で用いたデータとその分析結果を踏まえ,シュワズル家にみられる行動原理の一側面を結婚相手の選択という側面から導出し、これにたいして上位権力の動向がどの程度、あるいは、どのように連動していたかについて定量的な手法を用いた分析をおこなった。 以上は,シュワズル家の結婚行為に限定した分析ではあるものの,ここから得られた成果から,18世紀のロレーヌ貴族が軸とする政治・外交ネットワークのベースとなるロレーヌ貴族の家系的戦略と政治的行動原理の一端を明らかにすることができたと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍以前より家庭の事情で研究が進捗しておらず,くわえてコロナ禍以降は研究の進捗に欠かせない史料調査と収集のための海外渡航も未だ実現していない状況にある。そのため今年度は、手持ちの史資料で対応できるよう当初の研究計画を大幅に変更して作業を進めたが,これまでの遅れを取り戻すには至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
研究期間を延長したため今年度(23年度)が最終年度となるが,長期あるいは複数回の海外渡航による調査旅行を実現させたいと考えている。これにより,本研究(当該の研究課題)を少しでも進捗させると同時に、今後の研究の展望もえられるようにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
助成金の多くを史料の調査旅行にあてる予定であったが、コロナ禍以降は実現できていないため次年度使用額が生じた。今年度は,史料の調査と収集を目的とした調査旅行を実施する予定であるため,これの旅費として使用する。
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