研究課題
若手研究(B)
本研究では、「長い18世紀」におけるイギリス陸軍兵士の複合性と、それが彼らのアイデンティティ形成に果たした役割との関係性を具体的に検証した。そして、18世紀を通じて(とくに世紀半ば以降)軍内のナショナリティの複合性が増していったこと、また個々のナショナリティが人的結合の要因として働くと同時に、それらを包摂する連帯意識もまた漸進的に形成されていったことを明らかにした。
人文学
本研究は、近年のイギリス史研究における複合国家論の成果をふまえつつ、その議論の中に陸軍を位置づけようとする試みである。これまで軍事史の観点から考察されることのなかった複合国家論に新たな視角を提供したことは、本研究の重要な成果といえる。またアイルランド将兵の分析を通じて、従来の研究において国民意識の核とみなされてきたプロテスタンティズムに依らない連帯意識(≒国民意識)がイギリス陸軍内において成立していたことが示された。