研究課題/領域番号 |
17K13561
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
南雲 泰輔 山口大学, 人文学部, 講師 (70735901)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 後期ローマ帝国 / ポイティンガー図 / 公的伝達システム / ローマの道 |
研究実績の概要 |
本研究は,後期ローマ帝国時代において認識され,史資料のなかに表現された世界認識の構造の解明を目的とする。後期ローマ帝国時代は,帝国の政治的崩壊・解体期であるが,他方で帝国内外の領域や道路網の状況を総合的・俯瞰的に把握しようとする多様な史資料群が生成した時代でもあった。それらは単に帝政後期の現実を反映するばかりでなく,これに先立つ時代に形成された世界認識を継承した結果,同時代の状況からの乖離や錯誤をも内在させている。本研究では,図像資料ポイティンガー図を中心とし,後期ローマ帝国時代の関連史資料を比較対照することで,そこに表現された「世界」の「複層性」と「統合性」について考察する。平成29年度は研究の初年度であるため,当初の計画通り,まずは後期ローマ帝国時代の世界認識に関連する史資料を可能な限り網羅的・体系的に収集し分析することから始めた。第一に,2017年9月に英国・ロンドン大学古典学研究所および英国図書館において4日間の集中的な資料調査を実施した。第二に,収集した史資料を用いて,ポイティンガー図にかんする近年の研究動向を改めて詳細に分析し,これまでの認識を再確認・修正することができた。その成果の一部は,第16回日本ビザンツ学会大会(2018年3月26日,於石川県政記念しいのき迎賓館)において口頭で報告を行なった。第三に,ポイティンガー図との関連が想定されている後期ローマ帝国時代の公的伝達システム(クルスス・プブリクス)を扱った最新の研究文献の書評を,『異文化研究』第12号(山口大学人文学部異文化交流研究施設,2018年3月31日刊行)において発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,当初の計画通り,関連史資料の収集と分析を実施するとともに,その成果の一部を学会で報告し,質疑応答や意見交換を通じて今後の課題への認識を深めることができた。加えて,最新の関連文献にかんする書評をも発表することができた。
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今後の研究の推進方策 |
現在までの研究の進捗状況はおおむね順調であり,今後の研究も計画調書に記載の通り推進する予定である。まずは,本年度の口頭報告を学術雑誌に発表することを目標としたい。なお,本研究課題の応募時点では,研究期間全体を通じて国立情報学研究所GIFプロジェクト(OCLCグローバルILL)を利用した海外図書館からの図書現物貸借や複写の依頼を行なうことを想定していたが,2018年3月末日をもって同プロジェクトが終了したため(2017年9月14日付発表),今後国内での史資料収集に際し困難が生じる可能性がある。所属大学図書館の担当者とも相談し,可能な方途を検討していきたい。
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