研究実績の概要 |
本年度は,第一に,前年度に引き続き,収集済み史資料の整理検討および研究成果を学術雑誌へ投稿するための原稿化作業をそれぞれ進めた。これは今後も推進する予定である。第二に,当初の計画に沿って,前年度に実施した『ポイティンガー図』と『アントニヌス旅程表』の比較研究の成果の一部を,「ポイティンガー図とアントニヌス旅程表:後期ローマ帝国時代における地理的情報の継受の態様」として,第18回古代史研究会大会(2019年12月22日,於京都大学)において口頭で報告を行なった。第三に,本研究の対象とする時代の理解にかんする近時の学界動向について,時代区分論の観点からまとめた論文「西洋古代史の時代区分と「古代末期」概念の新展開」を,『思想』1149(2020年1月号「時代区分論」)(岩波書店,2020年1月5日刊行)に発表した。第四に,ローマ帝国時代における地理的認識・世界観について,地理的携帯型日時計という興味深い遺物に着眼し考察した研究文献R. Talbert, Roman Portable Sundials: The Empire in Your Hand (Oxford, 2017)の書評を『西洋古代史研究』19(京都大学大学院文学研究科,2019年12月18日刊行)に,また,背景としてのローマ帝国に対する視点の相対化を促す研究文献E. Dench, Empire and Political Cultures in the Roman World (Cambridge, 2018)の書評を『西洋古典学研究』68(日本西洋古典学会,2020年3月12日刊行)に,それぞれ発表する機会を得られたことも有意義であった。
|