本研究は、19世紀初頭におけるイギリスの地方政治を地方ホイッグを中心に検討することを目的としている。2019年度の研究実績として、特に以下の3点を挙げたい。 第一に、2019年1月に開催された国際学会British Society for Eighteenth-Century Studies(BSECS)での年次大会での報告をもとに、'Posthumous Cult of Charles James Fox: Whig Associations in the 1810s'というタイトルで論文を仕上げた。ここでは、主に、ホイッグ党指導者C・J・フォックスが死去した後、ホイッグ党議員や地域社会における党支持者が、彼に対する政治的イメージをどのように・どの程度利用しつつ、政治活動を行なっていたかを検討した。本論文は、Leaves (CLIMAS、ボルドー=モンテーニュ大学)より近刊予定である。 第二に、19世紀初頭の地方政治に関するコンテクストをより深く理解することを目的の1つに、「フランス革命・ナポレオン戦争期イギリスの政治的公共圏」というタイトルで論文を執筆した。本論文は、近刊予定の論集『ナポレオン帝国と公共性』の一つの章として、ミネルヴァ書房より出版される。 第三に、2020年1月に開催されたBSECSでの年次大会で口頭報告を行った。タイトルは、'The Construction Projects of the Melville Monument and the Pitt Monument: Edinburgh Tories in the Early Nineteenth Century'である。本報告は、19世紀初頭のエディンバラにおけるトーリ政治を中心に考察したものだが、それに対する対抗勢力としての地方ホイッグにも目を配り、いかに地方トーリが地方ホイッグとの政争に敗北したのかを、トーリ指導者のモニュメント建設計画(の失敗)という観点から検討した。
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