研究課題/領域番号 |
17K13564
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
松本 圭太 九州大学, 人文科学研究院, 学術研究員 (00726549)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ユーラシア草原地帯 / 初期遊牧民文化 / 青銅器 / 前1千年紀 / スキタイ系文化 / 初期鉄器時代 / 長城地帯 / モンゴリア |
研究実績の概要 |
本年度は以下の項目について検討を進めた。 1)以前の年度において進めた、同時期の青銅利器に関する検討継続およびその報告。以前に鋳造技法に基づいて抽出した、前1千年紀ユーラシア草原地帯東部の青銅刀子における分類単位と、金属成分との関連を分析・考察した。銅以外の主要元素である、錫、鉛、ヒ素の各成分について、型式ごとに割合を検討した結果、分類単位と金属成分がある程度相関することが明らかとなった。それによると、青銅刀子の型式・成分においては、前7世紀頃、前5世紀頃の2回に大きく変化がみられる。青銅刀子は草原地帯東部全体に分布するものであり、本変化が極めて広範囲に起きていたことが知られ、前者の変化は長城地帯や中国中原、後者は南シベリアに関連する可能性が指摘できる。これらの結果は、本年12月の日本中国考古学会で報告している。 2)飾金具におけるデザインの検討。上記の鋳造技法・型式変化と同時に、刀子のデザインも大きく変化することが判明した。前6-5世紀頃に、新たな技法を伴ったデザインが出現するのである。この新たなデザインは、刀子のみならず同時期の飾金具全般に看取されるのであるが、青銅刀子・飾金具における製作技法、特に鋳型を形成する際の笵模の差に起因すると考えている。本デザインの最古の例を辿っていくと、その起源は前7世紀後半頃の東南ウラル~南シベリア付近にあると予想された。これらの結果については、九州史学会、北アジア調査研究報告会で発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度までの作業によって、前1千年紀前半の草原地帯東部における青銅器文化の動態を大まかに把握することができ、学会等で部分的に成果報告もできた。さらにデザイン、金属成分の差異、さらには中国中原との関わりなど、今後の検討課題が広がりつつある。
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今後の研究の推進方策 |
本年度までで明らかにした部分に、さらなる分析・考察を加えていくつかの成果報告を行うことが、来年度前半期の第一の目的である。 後半期においては、これまでの青銅利器・飾金具の分析に加え、墓葬に関しても注意を払いつつ、本研究を総括したい。さらに、各段階における草原地帯と中国中原との関係についても見通しを立て、今後へとつなげたい。
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