研究課題/領域番号 |
17K13564
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
松本 圭太 九州大学, 人文科学研究院, 学術研究員 (00726549)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ユーラシア草原地帯 / 初期鉄器時代 / 青銅 / 製作技術 / 小型帯金具 / 匈奴 / 月氏 / 長城地帯 |
研究実績の概要 |
前年度までの資料集成と分析に基づき、これまでの成果を総括することに重点を置いた。 前1千年紀半ばのユーラシア草原地帯においては、各地で大きな変化が指摘され、そうした変化は、南シベリア、中央アジア、長城地帯のような各地における文化的不連続性から見いだされてきた。しかしながら、こうした各地の変化が共通しているか否か、さらにはその背景は不明であった。そこで本研究では、草原地帯東部に分布する青銅装飾品や利器を、製作技法的観点から統合的に検討し、以下のような動態を明らかにした。 前2千年紀末に、南シベリアから青銅器製作技術がユーラシア草原地帯全体に拡散する。前1千年紀初頭は、そうした南シベリア由来の技術が各地で受容後、地域性が顕在化してくる段階である。この段階にも草原地帯内、さらには中国中原も含めた交流は看取されるものの、各地の独自性が強いことが、青銅器の型式から伺える。 こうした状況が前6世紀末から前5世紀にかけて変化する。それには、ウラル地方から南シベリア付近でいち早く出現した、新たな青銅器製作技術(原型素材の変化)とそれに伴う、デザイン手法が関わっている。このような新技術群が複合的に、モンゴリアに拡散したと考えられる。こうした変化を本研究で確認したことにより、従来個別に指摘されていた、当該期の草原地帯における変化が、少なくともその東部では有機的に関連していることが明らかになったのである。匈奴形成の直前に起きた、こうした広範囲での文化動態は、ユーラシア草原地帯における集団の組織化を考えていく上で重要な成果であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
匈奴出現の直前段階における、ユーラシア草原地帯の文化動態を統一的観点からおおよそ復元することが出来、成果も刊行されている。新型コロナウイルス感染症拡大のため、当該年度は国外における学会発表が不可能となったが、次年度に開催される学会での報告を予定している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、本研究の成果を国外にて発表する予定である。さらには、前1千年紀における草原地帯東部の変化の背景、および草原地帯西部の様相について、引き続き検討を行っていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症拡大のため、当該年度開催の国際学会が延期となり、その分の旅費を次年度使用とした。
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