研究課題/領域番号 |
17K13565
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
山野 ケン陽次郎 熊本大学, 埋蔵文化財調査センター, 助教 (10711997)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | マリアナ諸島 / 先史時代 / 先ラッテ期 / ラッテ期 / 貝製品 / 製作技法 |
研究実績の概要 |
本年度は2016年度までに実施したグアム博物館等での資料調査と文献収集の実施の調査成果を整理した。そして、先史マリアナ諸島における貝製品の研究史をまとめ、実測図をデジタルトレースにより製図化するなどの整理作業を進めた。一方で、マリアナ諸島の先史時代における貝製品に関する先行研究や民族事例をまとめた。そして、これら先行研究を基にし、集成した貝製品を貝製実用品と貝製装飾品の大きく二つに分類し、素材や形態、製作技法などから細分をおこなった。 マリアナ諸島の先史時代は、紀元前約1500年~紀元後約1000年の先ラッテ期と、紀元後約1000年~1700年のラッテ期に大きく分かれる。マリアナ諸島で出土した貝製品の分類をおこない、各時期における各製品の有無を分析したところ、貝製品の組成と各貝製品の素材や形態について時期的相違が見て取れた。とくに貝製装飾品の組成内容は、貝製小玉や貝製腕輪、定形貝製品など比較的多種多様な貝製装飾品を有する先ラッテ期に対し、ラッテ期はウミギクガイ科製ビーズやウミギクガイ科製有孔製品、シャコガイ科製三日月状貝製品などに特化しており、両時期で明確に異なった。また、貝斧、貝製釣針などの実用品については両時期で形態や製作技法上の違いが確認された。先行研究では貝製品に関する総括的研究が存在しないため、これら貝製品の組成変化や形態変化などを精査し変遷をまとめることは当時の貝殻利用や生業活動、精神性の一端を知る上で重要である。また今後、先史時代のマリアナ諸島の起源や文化伝播に関する重要な知見を示せる可能性がある。これらの成果の一部を学術雑誌、論集に投稿し、研究集会での発表もおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度までに当初の目的の一つとしていた貝製品の集成作業はほぼ終了した。また、資料調査で実測した資料のうち、8割の貝製品については図化が終了している。グアム博物館では先ラッテ期の貝製品が多く出土したナトン海岸遺跡や、ラッテ期の貝製品が出土したガン海岸遺跡における資料調査を実施できている。今後、タシ遺跡やマネンゴン丘陵遺跡などの調査申請を行う予定だが、博物館側の状況次第では、サイパン博物館のウナイチュチュ遺跡やチャランピアオ遺跡の資料調査に移行する。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は本研究課題の最終年度である。本年度は昨年度実施できなかった分も含めて資料調査を予定しているが、グアムの発掘資料を保管しているグアム博物館の状況が変わり、資料閲覧が困難になる可能性がある。そのため、新たにサイパン博物館における資料調査を画策しており、調整中である。また、貝製品の集成表や分布図の作成、ハプト遺跡のラッテ期の貝製品の整理作業などを同時進行で行う。最終的にその調査成果を発表や論文で公表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度は職務の関係で海外への長期間の渡航と資料調査を実施することができなかった。今年度は昨年度行けなかったグアムやサイパンの博物館への資料調査を予定している。また、実測や写真撮影などデータ記録の作業効率を上げるため、太平洋考古学の専門家あるいは学生と共に調査を実施する。
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