研究課題/領域番号 |
17K13566
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
向井 佑介 京都大学, 人文科学研究所, 准教授 (50452298)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 仏塔 / 石窟寺院 / 伽藍配置 |
研究実績の概要 |
本研究は、中国南北朝時代の仏塔と仏教寺院について、①塔の上部構造(外観)、②内部構造(塔内の荘厳)、③地下構造(塔下の舎利埋納施設)、④寺院内における塔の配置、という4つの方面からその空間構造を立体的に解明するとともに、背景にある儀礼・信仰・思想をさぐろうとするものである。これにかかわる平成28年度の研究実績は、次のとおりである。 (1)京都大学人文科学研究所および東京大学東洋文化研究所・工学研究科建築学専攻が所蔵する20世紀前半の写真資料のうち、鞏県石窟・響堂山石窟・天龍山石窟・山東諸窟などを撮影したものについて、撮影場所の特定および既存刊行物との照合を進め、そのなかに記録されている仏塔関係資料の集成をおこなった。 (2)仏塔の上部構造(外観)を明らかにするため、石窟寺院の彫刻や単独の仏教造像にあらわれた5~6世紀の仏塔図像の集成を進めた。その研究成果のひとつとして、5世紀後半の雲岡石窟における仏塔意匠の類型・系譜・変遷について整理した論考を公刊した(向井佑介「雲岡石窟の仏塔意匠」京都大学人文科学研究所・中国社会科学院考古研究所編『雲岡石窟』第19巻、科学出版社東京、2017年)。 (3)寺院内における塔の配置について検討するため、漢魏晋南北朝から隋唐代における仏教寺院の伽藍配置にかかわる文献史料と碑刻類の集成を進めた。そのなかで、北朝から隋唐代の特定の時期に出現する双塔伽藍に着目し、その伽藍構造と造営背景について考察を進め、論文としてまとめた。ただ、これについては論文集の刊行時期が未確定であるため、成果の詳細と書誌情報は次年度以降に記載することにしたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は、仏塔に関係する考古資料の分析、写真資料の整理、文献史料・碑刻史料の検討を3つの柱として研究を進めた。研究実績の項目に述べたとおり、一部の論文の刊行時期に若干の遅れが見込まれるものの、全体として研究は順調であり、その成果の公表も着実に進めている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の実施にあたっては、当初の予定どおり、遺跡と遺物の考古学的調査、写真資料の整理、文献史料・碑刻史料の検討という3つの方面から研究を進める。 (1)河北省ギョウ城南郊の趙彭城仏寺址と核桃園仏寺址において発掘された東魏・北斉代の仏塔址を主要な検討対象とし、出土遺構と遺物の分析をもとに、塔の地下構造と舎利埋納の実態について検討を進め、これらよりふるい北魏太和五年(481)定州舎利石函出土遺物と比較しつつ考察をおこなう。 (2)京都大学人文科学研究所および東京大学東洋文化研究所・工学研究科建築学専攻が所蔵する鞏県石窟・響堂山石窟・天龍山石窟・山東諸窟などの20世紀前半の写真資料について、図録として公刊するための準備を進め、あわせて仏塔関係資料の集成を継続して実施する。 (3)平成30年度は、舎利埋納および舎利信仰にかかわる文献史料と碑刻史料を重点的に集成し、その分析を進め、(1)の遺構・遺物の検討結果とあわせて論文にまとめ、学術誌に投稿する予定である。
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