研究課題/領域番号 |
17K13566
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
向井 佑介 京都大学, 人文科学研究所, 准教授 (50452298)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 仏塔 / 舎利 / 浮図祠 / 瓦 / 塑像 / 雲岡石窟 |
研究実績の概要 |
令和元年度の研究実績は、以下のとおりである。 (1)1960年代に河北省定県の静志寺舎利塔地宮から出土した北魏興安二年(453)銘の石函について検討した。近年公表された石函の実物および拓本をもとに、側面に線刻された図像の描き起こし図を作成した。そして、石函の図像に特徴的な山岳紋様・比丘図像に着目して、雲岡石窟・敦煌莫高窟・キジル石窟などの類例と比較しつつ図像系譜を整理し、その思想的背景を考察した。その成果は、論文にまとめて『東方学報』第94冊に掲載した。 (2)東晋から南北朝時代の舎利埋納について、考古資料と文献史料の両面から整理した。まず、近年公表された浙江省桐廬県の南朝舎利石函について検討し、石函蓋の蓮華紋や石函側面の獅子・香炉・側視形蓮華などの表現からそれが梁代に位置づけられることを確認し、あわせて文献史料に記載される東晋・南朝の舎利埋納の事例を整理した。また、北魏太和五年(481)石函の出土状況・銘文・埋納文物について再検討し、さらに北朝後期の趙彭城仏寺址と核桃園仏寺址の例についても朝鮮三国や日本の古代寺院との比較分析を進めた。 (3)先行する後漢から三国時代の仏塔関係資料を集成・検討した。近年、湖北省襄陽から出土した相輪をもつ楼閣明器、かつて河南省鞏県の窖蔵から発見された銅製ストゥーパなどの特殊な青銅器、そして洛陽において収集されていた2世紀後半ないし3世紀のものとされるカロシュティー文字銘をもつ石片などに着目し、文献史料と対比しつつその学術的意義を再検討した。 (4)上述の成果をまとめて、研究代表者の既刊の論考とあわせて、『中国初期仏塔の研究』と題する学術書を出版した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和元年度は、それ以前から進めていた中国南北朝仏塔の舎利埋納にかかわる考古資料・文献史料の整理と分析を終え、学術論文にまとめて公表することができた。また、刊行が遅れていた中国の双塔伽藍についての論文も刊行された。さらに、研究代表者が推進してきた中国初期仏塔の研究成果をまとめた学術書を出版社から公刊することができた。このように、本研究の課題と目標に対して、当初予定していたとおりの十分な成果を出すことができていると考える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の課題と目標に対しては、年度末に刊行した学術書によって、一定の成果を示すことができた。最終年度である令和2年度は、戦前の写真資料の整理と検討を継続して進めるとともに、単著の執筆過程でえられた新たな観点や知見を掘り下げて、各分野の学会や一般向けのセミナーにおいて発表し、さらに研究を発展させていく予定である。なお、昨今の新型コロナウイルスの流行状況に鑑み、国外の資料調査は実施しないこととし、国内では可能な範囲において学会・研究会・セミナーなどでの報告をおこなう。 まず、後漢から魏晋代における初期の仏教遺物について、仏塔・仏教寺院以外の資料も含めて集成・検討し、その成果を京都大学人文科学研究所の共同研究「3世紀東アジアの研究」班において報告し、その成果を学術論文にまとめる。また、これまで考古資料を中心として進めてきた中国初期仏塔の研究成果をさらに発展させるとともに、仏教史のなかに位置づけなおし、その成果を仏教史学会などで報告することを予定している。
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