研究課題
平成29年度における研究では、エジプト北部における青色彩文土器の生産と流通の復元を目的とし、エジプト北部の遺跡(サッカラ北遺跡、アブ・シール南丘陵遺跡、ダハシュール北遺跡)から出土した青色彩文土器を主な対象とした。1.青色彩文土器の考古学的調査、2.青色彩文土器の化学分析、3.青色彩文土器の集成を行った。「1.青色彩文土器の考古学的調査」では、それぞれの遺跡において、2017年8月19日から9月23日、2018年2月8日から21日の期間にエジプト現地調査を実施し、青色彩文土器の実測、観察、写真撮影、3Dモデル作成などを含む土器の資料化を行った。「2.青色彩文土器の化学分析」では、研究協力者の阿部善也(東京理科大学・講師)に依頼し、エジプト現地にポータブル非破壊分析機材を持ち込み、青色彩文土器の胎土および顔料を対象に分析を行った。「3.青色彩文土器の集成」では、主にエジプト北部を対象とし、これまでに出版された青色彩文土器についての集成を行い、データベース化した。平成29年度の研究により、生産量が次第に増加し、各地に生産拠点ができること、それに伴い流通範囲が地方ごとに限定されるようになることなどが明らかとなった。これまで青色彩文土器の生産、流通の変遷に関する研究はほとんどなく、新たな研究成果を提示することができた。その他、平成30年度の研究実施対象であるエジプト南部の遺跡(ルクソール西岸岩窟墓、アメンヘテプ3世神殿)において、2017年12月23日から1月15日、2月24日から3月20日の期間に、事前の土器調査を実施した。研究成果については、日本オリエント学会において発表を行った。また平成29年度成果については、平成30年度にも日本オリエント学会、日本西アジア考古学会にて発表予定である。
2: おおむね順調に進展している
平成29年度では、「1.青色彩文土器の考古学的調査」について、当初の計画どおりにエジプト北部の遺跡(サッカラ北遺跡、アブ・シール南丘陵遺跡、ダハシュール北遺跡)において現地調査を実施することができ、土器資料を得ることができた。「2.青色彩文土器の化学分析」については、平成29年度では、エジプト北部の遺跡から出土した青色彩文土器を対象としていたものの、研究協力者の現地調査参加期間の都合により、平成30年度実施予定のエジプト南部の遺跡から出土した青色彩文土器を対象とし、分析を実施した。代わりに平成30年度において、エジプト北部の遺跡を対象とする化学分析を実施する予定であるため、進捗には問題ないと考えている。「3.青色彩文土器の集成」についても、当初の計画に沿って集成を実施している。研究成果については、国内学会を中心に、発表を実施した。
平成29年度の研究を受けて、平成30年度では、当初の研究計画どおりに、エジプト南部から出土した青色彩文土器を主な対象とし、現地調査、研究を実施する計画である。そして、最終年度である平成31年度には、北部と南部を統合した研究のまとめを行う計画である。また、引き続き国内学会で発表、論文投稿を行うとともに、特に海外の学会における発表、論文投稿に重点を置き、海外の土器研究者からのフィードバックを得る予定である。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件)
オリエント
巻: 第60巻2号 ページ: 184-195
Proceedings of the XI International Congress of Egyptologists, Florence Egyptian Museum, Florence, 23-30 August 2015
巻: ー ページ: 613-618