研究課題/領域番号 |
17K13572
|
研究機関 | 総合地球環境学研究所 |
研究代表者 |
近藤 康久 総合地球環境学研究所, 研究基盤国際センター, 准教授 (90599226)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | アラビア / モンスーン / オマーン / 水環境 / 完新世 / 青銅器時代 / 景観 / 考古学 |
研究実績の概要 |
前年度の研究成果を踏まえ、6月16日に日本西アジア考古学会第23回大会の特別セッション「アラビア半島の考古学」において、「バート遺跡群にみるマガン社会の諸相」と題する招待講演を行なった。また、前年度の調査成果を報告書に取りまとめるとともに、過年度の調査成果を再構成して論文に取りまとめ、英文学術誌The Journal of Oman Studiesにて公表した。 12月30日から2019年1月2日までの4日間、オマーン内陸部のワディ・タヌーフ峡谷における遺跡調査を実施した。調査には研究代表者(近藤)と2名の研究協力者(三木健裕・黒沼太一)が参加した。新たに峡谷内の段丘上に先イスラーム期の墓地を発見したほか、既報告の岩画の位置を確認した。ワディ・タヌーフ1号洞穴の試掘調査に多くの時間を費やした。 ワディ・タヌーフ1号洞穴では、昨シーズン(2017年度)の予備調査により、開口部の幅は約8m、奥行きは約18mであることが明らかになった。今シーズンは、トータルステーションを用いて洞穴内部の簡易な平面図と標高図を作成した。洞穴開口部から奥部までは、水平距離約15m、垂直距離約9mであり、平均勾配30.1度の急傾斜である。洞穴内には風成の砂塵が堆積していた。奥部に崩落とみられる岩石があり、それらが開口部へ転落した痕跡が認められた。 また、今シーズンは、昨シーズンに開口部近くに設定したTest Pit 1(TP1)の試掘調査を継続した。トレンチを2m四方に拡張して掘り下げたところ、内部から灰層が検出されたトレンチからは、完新世中期の土器片が出土した。石器は今のところ見つかっていない。堆積は下に続いており、完新世初頭または更新世の文化層が見つかる可能性がある。 以上の調査成果を、1月13日にオマーン遺産文化省に報告するとともに、来シーズン以降の調査計画を打ち合わせた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度の遺跡分布調査の結果を踏まえ、ワディ・スーク期の遺物を伴う堆積層を発見したワディ・タヌーフ1号洞穴において試掘調査を継続したところ、同時期の遺物を含む堆積層の存在を確認できた。そのため、最終年度の成果取りまとめに向けて、研究はおおむね順調に進展していると自己評価できる。
|
今後の研究の推進方策 |
2019年度は、ワディ・タヌーフ1号洞穴の発掘調査を重点的に推進する計画である。調査成果の整理作業においては、近藤が共同編集型GISデータベースの設計運用とデータ分析、研究協力者の三木が採集遺物の整理・撮影・3次元計測、黒沼が遺構の記載を分担し、効率的に研究を進める。採集した人工遺物の広域編年への位置付け、墳墓の分類、放射性炭素年代測定、遺跡立地傾向の分析などの成果を総合して、先史オアシス社会の形成と変容のプロセスを理解し、もってモンスーンアラビアの文化的特徴についての予察を得ることをめざす。研究成果は国際会議Seminar for Arabian Studiesで報告するほか、The Journal of Oman Studiesへの投稿を計画している。
|
次年度使用額が生じた理由 |
12月から1月にかけての海外調査の経費精算に時間を要したため、少額の残金を次年度に繰り越すことにより、有効に使用することとした。
|