最終年度である令和3年度には、本研究の成果をまとめた論文「渤海国の瓦■(せん)の変遷と系譜―紋様■(せん)を読み解く―」が6月刊行の『中国考古学論叢:古代東アジア社会への多角的アプローチ』(同成社)に掲載された。資料調査では、前年度までに未完であった東京大学総合博物館等保管資料の三次元計測を終え、本研究で当初計画していたほぼ全資料について、データ化・分析を終えた。また、研究期間の延長によって、以前計測した渤海上京城遺跡出土軒丸瓦の瓦当紋様について再検討し、瓦笵の分類および、西古城・八連城で出土した瓦当との同笵関係の検討を進めた。
さらに、令和3年度は、異なる地域の考古学・文献史学を専門とする研究者らと、オンライン会議による交流・意見交換を積極的におこなった。渤海国研究における瓦研究の経緯と現状について、異なる国・研究分野の研究者にも分かるよう、論文「渤海瓦■(せん)研究の諸問題 ―なぜ、考古学者は瓦を研究するのか―」(『高句麗・渤海史の射程 : 古代東北アジア史研究の新動向』汲古書院)を執筆した。
SfM-MVSによる考古学資料の三次元計測と分析方法の開発・普及にも力を入れた。オンラインワークショップでの講師や、Youtubeチャンネル「SfMの中村さん」での情報発信、大学院生等への対面での指導等をおこなった。なお、本研究で得られた知識・技術をもとに、三次元データによる鬼瓦の復元や、型で成形した金属製品の比較検討もおこなった。
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