研究課題/領域番号 |
17K13576
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研究機関 | 宮城教育大学 |
研究代表者 |
小田 隆史 宮城教育大学, 大学院教育学研究科高度教職実践専攻, 准教授 (60628551)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 脆弱性 / 多重剥奪 / リスク / ガバナンス / アメリカ / サンフランシスコ / インナーシティ / 都市災害 |
研究実績の概要 |
都市の「災害弱者」包摂に関する議論では,自然災害の影響を強く受けるとされる社会経済的に脆弱な人々への配慮や参加が重視されつつあるが,大都市圏の内部におけるミクロな地域的格差と災害リスクとの関係を実証した研究は寡少である。そこで本研究課題では,経済的・物的窮乏による多重剥奪(負の連鎖)がみられる地区を複数有する米国大都市圏を事例に,インナーシティと災害リスクとの関係性についてミクロなスケールから空間分析することを目的としている。そこで初年度は,先行研究のレビューを行い,社会的脆弱性指標,多重剥奪インデックスの合衆国センサスの実装手法の検討を行った。商務省センサス局が公開しているアメリカン・ファクト・ファインダー等の公開統計データをもとに,既存の社会的脆弱性(都市住民の社会経済的空間分布),都市圏内での地域毎のリスクに対する脆弱性の輪郭を空間的に提示することを試みた。そこで,地震工学の研究者から協力を得て,地盤,構造種別,耐震化率,震度曝露人口等の震災ポテンシャル指標を,合衆国センサスにおける社会経済的指標(人口,経済,学歴,人種・エスニシティ,不動産ほか)とどのようにリンクすれば良いか検討を行った。センサスの統計区と,その他の震災ポテンシャル指標は必ずしも同一空間区分(統計区分)で整理することができないため,それらの重ね合わせ方法(クロスの空間分析)については,さらに検討を要することがわかった。本研究課題の今後の展開に関して,学会公開研究会で発表し,当該研究会に参加した関連分野の研究者から研究方針に関する有益な助言を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
人事異動とそれに伴う研究環境の変化のため,当初予定していた現地調査等の実施を見送ることとなった。他方,文献レビューと統計データの入手,予察的分析を行う等の研究について遂行し,それらの成果をもとに学会発表を行うなど,研究は前進している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降,現地調査を実施し,以前から協力関係にある行政(州・市/郡)の都市計画局,防災・危機管理関係部局,大学・研究機関を往訪し,既にインターネット上で特定・ダウンロードしている国勢統計データ(最新2010)に加えて,本研究に活用しうる社会経済的データや都市再開発に関するデータ収集を行う。収集したデータをもとに,既存の社会的脆弱性・都市住民に対する多重剥奪に関する指標などを用いて,都市圏内での地域毎のリスクに対する脆弱性の輪郭を空間的に考察の上,査読付論文として投稿し,討議を行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
人事異動とそれに伴う研究環境の変化のため,当初予定していた本研究にかかる現地調査を延期せざるを得なかった。そのため,本研究課題は文献レビューと統計データの予察的分析が中心となったため経費未使用となった。平成30年度は,未実施の現地調査を実施するとともに,分析環境の整備,研究協力者の支援によるデータ分析等を進め,着実かつ適切に経費の執行に努める予定。
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