研究課題/領域番号 |
17K13576
|
研究機関 | 宮城教育大学 |
研究代表者 |
小田 隆史 宮城教育大学, 大学院教育学研究科高度教職実践専攻, 准教授 (60628551)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 脆弱性 / 多重剥奪 / リスク / ガバナンス / アメリカ / サンフランシスコ / インナーシティ / 都市災害 |
研究実績の概要 |
都市の「災害弱者」包摂に関する議論では,自然災害の影響を強く受けるとされる社会経済的に脆弱な人々への配慮や参加が重視されつつあるが,大都市圏の内部におけるミクロな地域的格差と災害リスクとの関係を実証した研究は寡少である。そこで本研究課題では,経済的・物的窮乏による多重剥奪(負の連鎖)がみられる地区を複数有する米国大都市圏を事例に,インナーシティと災害リスクとの関係性についてミクロなスケールから空間分析することを目的としている。 今年度は現地調査を予定通り実施し,サンフランシスコ市を訪問し,ロックフェラー財団の支援によりサンフランシスコ市役所に新設されたレジリエンス・復興室(Office of Resilience and Recovery)の室長他を往訪の上,研究の趣旨説明を行い本研究に関連する資料,統計等の提供,取扱の助言を受けた他,今後アプローチすべき関連部局,機関のインフォーマント(Neighborhood Empowering Network, Daniel Holmes氏他)についての紹介を得たうえ,同市の貧困層に対する地震対策の諸課題,既存不適格住宅(1978年以前に建築されたSoft Story Building)の耐震化支援,リーダーシップアカデミー等の若手防災啓発事業について,詳細な情報を得た。 またサンフランシスコ市公立図書館,カリフォルニア大学バークレー校,及び同大学出版会ほかにおいて,関連資料,書籍の入手を行った。同市では財政の半分を地震関連予算に充てているなか,多様な都市態様の変化によって住民層の入れ替え等の影響にも配慮(懸念)した対策の必要性を踏まえた災害対策を展開しつつあることや,近郊市等で昨年発生した地震や火災等によって住民層のジェントリフィケーションが進んでいる等の本研究に関係する知見が得られた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
学内組織改組による研究環境の変化のため昨年度フォローアップ調査の進度がやや遅れたが,今年度実施した調査でデータ収集やインフォーマントの特定等で遅れを取り戻した。
|
今後の研究の推進方策 |
現地調査で収集したデータをもとに,既存の社会的脆弱性・都市住民に対する多重剥奪に関するテーマで査読付学術論文等の場で公表し,分析内容の公開討議を行う。また追加調査や国内や現地の専門家からの指導助言を得たり,国際学会での討議を行ったりして本課題研究の質的改善を図り,本研究の最終成果到達に向けて研究を遂行する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
学内組織の改組に伴う研究環境の変化のため,当初予定していた年度2回目の現地調査を延期せざるを得なかった。次年度に,延期した当該フォローアップ調査を実施し,研究協力者の支援による分析等を進め,着実かつ適切に経費の執行に努める予定。
|