本研究課題では,経済的・物的窮乏による多重剥奪(負の連鎖)がみられる地区を複数有する米国大都市圏を事例に,インナーシティと災害リスクとの関係性についてミクロなスケールから空間分析することを目的としている。これまでに実施したフィールドワークでは、ロックフェラー財団の支援によりサンフランシスコ市役所に新設されたレジリエンス復興室(Office of Resilience and Recovery),カリフォルニア大学バークレー校,サンフランシスコ公立図書館等,現地調査で収集した耐震化支援,リーダーシップアカデミー等の若手防災啓発事業に関する関連文献の整理・分析を行った。また,サンフランシスコ・ベイエリアで進行するジェントリフィケーションに関する空間分析やメディア分析を進めた。さらに,ルイジアナ州ニューオーリンズで生じたハリケーン災害と人種・エスニシティにかかる文献を整理し,本研究のフレームワークの強化を行った。さらに,執筆した本課題研究に関する論文の内容を,当地において消防・防災に従事している実務者等に共有し研究成果の還元を行うとともに,実務者の視点からフィードバックを得た。その後,実施期間を今年度まで延長して新型コロナウイルス感染症の収束後に現地調査を計画したが,所属機関における海外渡航の制限,加えて所属先の異動時期とも重なり,実現に至らなかった。代替的に,関係する研究者との意見交換会の実施や研究会合への発表を行って,本研究を次のフェーズにどう展開していけば良いかの議論を深めた。
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