研究課題/領域番号 |
17K13579
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
伊賀 聖屋 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (70547075)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ネットワーク / エビ / 養殖 |
研究実績の概要 |
本年度は,インドネシア・西ジャワ州における環境保全型エビ生産システムの調査に着手する予定であった.しかし,新型コロナウイルスの流行によりインドネシアにおける調査の実施が困難となった.そのため,2018年度に実施した「屋内型エビ生産システム(ISPS)の開発・運用に関する調査」の成果を取りまとめる作業を中心に行った.その概要は以下の通りである. ①ISPSをめぐるネットワークは,高度な技術・機器の取り込みを通じて,周囲の自然条件がもたらしうる病気などのリスクを回避している.動員された技術や機器は,稚エビ,水,人間などの関係性を調整する上で重要な役割を果たすとともに,労働者の技量や熟練度に左右されないネットワークの安定性を担保する機能も有している.②このようなネットワークは,開発主要メンバーが持続可能な生産システムの開発を指向したことをきっかけとして編み出された.開発の初期段階では,日本国内にバナメイエビの閉鎖循環式陸上養殖(RAS)に関する技術がほとんど存在していなかったこともあり,ネットワークを海外へと空間的に伸長させることで,その技術を取り込んでいった.③その後,開発が本格化する中で,閉鎖的な育成条件下で想定される未解明の課題に対処すべく,専門的知識を有する研究者・企業を国内からネットワークへと動員していった.そして,彼らがRASに関わる萌芽的研究を重ねることで,ISPSの開発・運用が実現していった.④上の過程において,研究者らは高度な技術・機械をネットワークに動員し,これまでにない複雑な関係からなるネットワークを生み出した.そこに埋め込まれたアクター(とりわけ,非人間)の振る舞いの予測可能性は低下し,ネットワークの不確実性が上昇することとなる.そのような状況において,開発メンバーは,更に高度な技術を動員しながら,ローカルな生産の場におけるアクター間関係を最適化していった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究は,おおむね順調に進展した.ただし,2020年度に実施予定であったインドネシア・西ジャワ州における環境保全型エビ生産システムに関する調査がコロナウイルスの感染拡大のため延期となってしまった.そのため研究期間の延長を申請し,フィールドワーク等にかかる費用を繰り越した.可能であれば,2021年度は西ジャワ州における調査を中心に研究を進める予定である.
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今後の研究の推進方策 |
2019年度まで実施していたインドネシア・アチェ州におけるフィールド調査を継続的に実施するとともに,西ジャワ州における環境保全型エビ生産システムの調査に改めて着手する予定である.ただし,コロナウイルスの流行状況がまったく読めないことと,インドネシア国内におけるフィールドワークの実施が現実的に可能かどうか不明瞭である.場合によっては,国内のエビ生産システムに対するフィールドワークを中心に研究を進めていく可能性もある.本研究の枠組みとも関わる科学技術社会論やアクターネットワーク論に関連する文献のレビューは継続的に取り組んでいきたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響で,2020年度に実施予定であった調査費用を次年度へと繰り越した.状況を見極めつつ,国内外のエビ養殖に関するフィールドワークに使用する予定である.
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