本研究は、古地図研究において最も基礎的な分析である出版図の系譜に関する研究において、これまで近世を中心とした議論に偏っていたために等閑視されてきた近代の出版図までを研究の視野に入れた包括的な成果を得るために、カリフォルニア大学バークリー校(以下、UCB)所蔵古地図とGIS機能を援用した「出版図の系譜の再提起」を目的とする。 最終年度は、前年度までの成果である「GISによる描かれた都市の構図の分析(地点のGISデータベース)」活用して、出版図の系譜に対して新たな視点を提起することを目的として分析を進めた。ここで提起される系譜は、これまでの近世のみではなく近代の出版図も対象としながら、三都の描かれる構図の特徴を視覚化することで明らかにした。地図史・歴史地理学の先行研究の成果に立脚しながら、出版図に描かれた都市の構図や表象を、GISデータベースとして整備し、比較することで、差異や類似性を抽出することで新しい系譜を検討した。 また、本研究においてデジタル撮影された出版図の画像データは、協力機関であるUCBや立命館大学アートリサーチセンターのデータベースから、インターネット(WEB-GIS)を介して公開・共有されており、これまでの単なる画像閲覧だけではなく、歴史GISの新しい成果発信の事例としても期待される。 本研究は、今後、古地図研究・歴史地理学において、一般的なツールとしてGISが普及する際のフレームワークの確立とその実践を試みた成果でもある。
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