本研究の意義は,盛衰の激しさや漁家数の多さから不透明であったニシン漁家の全容について,定置漁業権データベースを作成し,全体像を把握したことと,ニシン漁獲量が異なる地域間の漁業権変遷の差異やニシン漁家・漁獲地域の対策を見出したことにある.定置漁業権データベースは,ニシン漁業史研究にとどまらず,近代北海道史や漁業史研究の基盤となる.また,近代北海道ニシン漁業を事例に考察した危機対応は,過去の事実を明らかにするのみならず,災害への対応,不況の時代をいかに乗り切るかという指針を示し,現在,未来に向けて発信する点においても,社会的意義があると考えられる.
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