研究課題/領域番号 |
17K13583
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研究機関 | 明治学院大学 |
研究代表者 |
半澤 誠司 明治学院大学, 社会学部, 准教授 (20514954)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | アニメーション産業 / コンテンツ産業 / 地方分散 / 地域労働市場 / ロックイン |
研究実績の概要 |
本年度は、アニメ産業を取り巻く現状の整理を進めると共に、調査先の現状把握を進めた。これによって、以前の調査以降に、調査先が達成した成果と、浮かび上がってきた課題が鮮明になった。したがって、次年度以降の調査に向けての足がかりも順調に得たといえる。 本年度に得られた研究成果は、主に以下の2点である。 第1に、実際に地方で活動を始めた企業にとって、地元市場を中心とした活動にはやはり困難が伴う事が示唆される。これは、単純に市場がないというよりも、一定の市場はあっても、それを安定してこなすための条件が厳しいためである。まず、発注元となる企業や自治体におけるアニメ産業やコンテンツ産業への理解が不十分であるため、東京の実績ある企業に発注を行ったり、手間暇をかけた説明や調整が求められたりする。そのため、地元で活動することが受注に有利には働かない側面があるだけはなく、高い調整コストが必要になる。 第2に、地元教育機関が人材を輩出していても、基本的にはクリエイター系人材であるため、地元では高度な仕事が出来ないと考えて、東京などの大都市部へ移動してしまう傾向がみられる。さらに、発注元などとの調整を担えるような専門知識を持った営業系人材は、業界経験のある中途人材を期待することになるが、地元へのU・Iターンはそうそうあるものではない。 以上を踏まえて、調査対象がこういった課題に対してどのように対処していくかを中心に、引き続き調査を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画時にあったような頻度では調査地を訪問できていないが、必要な情報は今のところ十分に集められている。ただ、最低限必要と考えていた対象への調査はできている。ただ、調査情報を踏まえた調査対象先の拡大までには至っていないため、より調査地を理解するために、調査対象の拡大ができれば、順調に研究が進んでいると評価できる段階といえる。
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今後の研究の推進方策 |
基本的には前年度と同じ調査を継続する。ただ、訪問頻度の増加、異なる調査先の開拓などによって、既に集めた情報も含めて現地を多面的に理解するための方策を試みる。そのために予定している調査は以下のようなものである。 第1に、引き続き調査対象企業と教育機関への継続的な調査を行う。これまで通り、事業展開や取引先についての情報を収集すると共に、労働力募集とその結果についても、一層注目をする。 第2に、新たな調査対象先の開拓を目指す。具体的には、現調査対象企業の取引先や、関係する労働者達に加えて、取引がなくても調査先が定期的に情報交換を行っているような関係にある企業や人びとである。 また、研究予算に余裕があれば、経済センサスの個票データ入手と整理も行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2つの大きな理由がある。 1つめは、調査機材としてのノートパソコン購入を初年度に行わなかったためである。これは、本研究計画以前から使用していたノートパソコンがまだ十分に利用に耐えるものであったと共に、初年度に販売されていたノートパソコンに適切な代替機種がなかったためである。しかし、以前より使用していたノートパソコンが初年度の調査中に破損したため、大体機種を次年度に購入する。 2つめは、調査先への訪問頻度が当初予定より少なかったためである。これは、申請者が他に行っている研究との兼ね合いで、十分に調査時間が取れなかったことに起因する。ただ、その他研究については2017年度において一段落がついたので、次年度の訪問頻度は初年度より増加する予定であり、そのための旅費とする。
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