研究課題/領域番号 |
17K13584
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
上杉 昌也 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 特別研究員 (50791886)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 居住地域分化 / 社会経済格差 / 小地域分析 / 職業構造 |
研究実績の概要 |
1.1980年以降の東京都区部における職業階層による小地域単位での居住地域分化の推移について定量的に明らかにした。1980年代以降、経済格差の拡大が指摘されるようになったが、対象地域全体としての居住地域分化の程度は、継続して低下していることが複数の居住分化指数により示された。例えば、いずれも居住地域分化の水準が大きいことを示すMultigroup dissimilarity indexやInformation theory indexは、25年間でそれぞれ0.165から0.124、0.038から0.025に減少している。しかしこの間に管理職のみは、同様の指標で見ても、ブルーカラー職を含む他の集団と居住地域分化を進展させており、ホワイトカラーの一部では空間的な隔離が強まっていることが明らかになった。立地係数の分布の変化からは、特に彼らは都心へと空間的集中を強めていることも示された。 2.全国市町村の2010年と2015年における社会階層の分極化と都市内居住地域分化の関係について明らかにした。1.と同様に職業構成に着目すると、対象となった2015年における268都市のうち、中間層の割合が低下したのは236都市であり、そのうち198都市で中間層以外の両端の層の割合が増加した分極化の現象が見られた。しかし居住地域分化の水準を表す相違指数(Dissimilarity index)の平均は、19.0(最大41.0:つくば市~最小7.6:小金井市)であり、214都市が2010年よりも減少していた。したがって必ずしも分極化の進展と居住地域分化の進展は対応するものではないことが分かり、両者の関係を文脈づける要因の解明が今後の課題となることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」で述べた2点の研究成果については、前者は論文として取りまとめて査読付き学術誌に投稿し、後者は2017年日本地理学会秋季学術大会で口頭発表した。また本年度は文献調査およびデータ整備についても当初の予定通り進めており、文献調査に関しては、主に1990年代以降の地域格差やその決定要因に関する国内外の理論や実証研究成果を収集し、海外の居住地域分化研究の実証分析の成果については、その対象都市の特性や範囲、分析で採用された社会経済変数、居住地域分化を計測する定量的指標や空間スケール等についても整理することができた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度までに明らかになった社会経済格差と居住地域分化との関係(有無や強さ)が、どのような都市特性によって規定されているかについて、統計的手法や空間分析により明らかにしていく。また得られた結果については速やかに学会報告を行い、論文としてもまとめていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度に予定していた海外での国際発表を次年度に変更したため。具体的には、2018年9月にオランダ・デルフト工科大学で開かれる国際会議「Urban Poverty and segregation in a globalized world」において招待講演を行うことが決定し、日本における居住地域分化とその国際比較について研究成果を報告する予定である。
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