本年度は、最新の国勢調査である2015年のデータを用いて、日本の100の大都市雇用圏における社会経済的な居住分化の構造的要因を明らかにした。まず100都市圏におけるホワイトカラーとブルーカラー間の社会経済的居住分化の水準については、最も低い都市圏と最も高い都市圏では2倍以上の差がみられ、国内でも都市圏によってセグリゲーションの水準は大きく異なることが分かった。さらに多変量解析により、経済格差の水準の高さを表す「世帯収入ジニ係数」だけでなく、グローバル化による産業構造の変化を表す「生産者サービス割合」、公的住宅の空間的偏在度の高さを表す「公的住宅立地指数」などの構造的要因が、居住分化水準に対してそれぞれ独立な効果を持っていることが明らかになった。本研究の結果は、社会経済的な変化がなくても、ミクロな住宅供給や選択と集中といった都市政策の展開により、居住分化が進む可能性を示すものであり、都市・地域政策にも資する知見を提示できたと考えられる。また、小地域の社会経済的な居住者特性を表すジオデモグラフィクスと非集計の住宅取引データを用いて、大都市圏内のミクロな居住地域分化と住宅市場との関係についても検討することができた。 なお、本年度は最終年度であることから、査読付き学会誌や所属大学の紀要での論文発表や、都市住宅学会や人文地理学での学会発表を行った。残りの成果についても、速やかに論文投稿を行う予定である。
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