研究課題/領域番号 |
17K13585
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研究機関 | 国立民族学博物館 |
研究代表者 |
左地 亮子 (野呂) 国立民族学博物館, グローバル現象研究部, 機関研究員 (50771416)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ジプシー / フランス / 市民社会 / ノマド / 共同体 / 旅 / 巡礼 / ゲットー |
研究実績の概要 |
フランスのジプシーは、移動という生活様式に基づき、定住民社会の隙間に散々して暮らしてきたが、現在、進行する定住化とそれに伴う居住政策の下で、一つの名と特定の場をもつ「共同体」として一元化、周縁化されつつある。本研究では、この人々を一元化し隔離する諸力との交渉の中で、ジプシーが新たに編みだす「旅の共同体」に着目する。定住する地域と押し付けられた共同体を離れ、束の間の旅をするジプシーが、実践やアイデンティティの同一性により境界画定された別様の対抗空間をたちあげるのではなく、異質な他者との偶発的な出会いと共在を享受しながら非同一的な共同体を生きる局面を探る。ゲットー化された定住地を離れ、ツーリストのごとく旅するノマドの民族誌的事例から現代における市民的共同性について新たな知見を提示することが最終的な目的である。 具体的には、ジプシーの共同体をめぐる2つの局面として、A)定住地での居住政策と「共同体化」の推移を追いながら、B)聖地巡礼・移動集会の宗教活動、季節的農作業の経済活動を契機に現れるジプシーの「旅の共同体」を検証している。本年度は、現地調査に関しては、A)に関わる調査を8月、フランスのポーにて実施し、進行中の居住政策の推移とゲットー化状況に関する情報収集を行った。またB)に関わる調査は同時期にフランスのルルド、ならびにスペイン・バルセロナにて実施し、巡礼と市民祭に関する情報収集を行った。 以上の調査研究に加え、本年度は理論研究も進め、A)の調査に関しては、その後得られたデータを分析したうえで、シンポジウム発表を行った。 さらに本年度は、過去の迫害の記憶の継承と告発という視点から、フランスのジプシーがコメモラシオン運動を通してたちあげる市民的共同性を探る分析も進めた。これに関しても、いくつかの学会・研究会・講演会にて発表を行い、関連研究者と意見を交わした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
スペイン・バルセロナにおける市民祭調査に際しては、8月17日に同市内で勃発したテロ事件により調査対象の祭が中止となったため、十分なデータを収集することができなかった。しかし、その後フランスにて実施した現地調査では、A)とB)2つの調査事項において今後の研究の展開に深く関わる重要なデータを得ることができた。さらに、そのデータをもとに関連研究者と活発な意見交換を行い、シンポジウムの開催に繋げることができた。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、現地調査を継続するとともに、理論的分析を深める。とくに、初年度となる本年度は、研究発表を複数行い、関連研究者との議論を深めることができたため、次年度はこの成果を反映した書籍ならびに論文を完成させ、刊行する予定である。また、最終年度に予定しているシンポジウム開催に向けて、関連研究者と意見交換を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
バルセロナでのテロ事件にともなう調査内容変更により現地助手に支払う謝金が減額となったため。次年度使用額は、次回の現地調査で活用する予定である。
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備考 |
第39回 サントリー学芸賞〔思想・歴史部門〕受賞 年月日:2017年12月11日 受賞対象:『現代フランスを生きるジプシー――旅に住まうマヌーシュと共同性の人類学』(世界思想社)
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