最終年度となる2019年度は、本研究課題の主たるテーマに関する現地調査を計4度、フランスとスペインにて実施し、議論深化のためのデータを収集することができた。 具体的には、5月に「ジプシー巡礼祭」に関する調査(フランス、Les Saintes Maries de la Mer)、8月にジプシー/移動生活者居住政策の進展、およびペンテコステ派信仰集会に関する調査(フランス、PauおよびGien)、12月にスペインにおけるジプシーの居住と信仰に関する調査、2月にジプシー/移動生活者を対象とした身分登録及び居住政策に関する調査(フランス、Paris)を実施した。 国内では、以上の海外調査にて収集したデータを踏まえ、本研究課題全体に関わる議論を文献調査および研究会における意見交換により深化させ、成果公表に結びつけることができた。 具体的な研究の成果としては、まず、2020年3月に『年報人類学研究』(南山大学人類学研究所)第10号に査読付き論文「不確実性に満ちた環境に寄りそい、動くこと―フランスにおけるマヌーシュのノマディズムと共同体をめぐる考察」を掲載することができた。また、2020年度中の刊行に向けて、フランスのジプシーのノマディズムと共同体に関する単著書の執筆を進めている。これらの学術論文と単著書は、本研究課題主要調査地における 1)ジプシーのゲットー化状況と移動生活の今日展開、2)カトリック信仰とペンテコステ派改宗をめぐる近年の動態をまとめている点で、本研究課題に関する重要な成果発表と位置づけることができる。
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