本研究の目的は、沖縄県名護市辺野古の基地反対と結びついたジュゴンの保護活動がどのように生じ、地域社会にいかなる繋がりと隔たりを生み出しているかを、人びとの海利用の歴史とジュゴンとの関係、および保護活動家の営みとの関連で理解し、新たな理論モデルを提示することにある。この目的を達成するために、まず沖縄の海利用の変遷と基地計画の歴史を明らかにする【課題1】。次にジュゴン保護と基地反対運動の展開について現地調査を実施する【課題2】。さらに人と動物の関係論や環境・社会運動論に関する理論研究を行なう【課題3】。 最終年度に当たる2019年度は、前年度までに得られた【課題1】【課題2】の事例研究の成果をふまえ、さらに補足調査を実施した。具体的には、2019年3月に沖縄本島北部で、1頭のジュゴンの死骸が発見され、緊急保護対策が活発化している状況をふまえ、本研究では、ジュゴンの死をめぐる人々の反応や漁協の取り組みなど、インタビュー調査を実施した。また並行して、【課題3】にかかわる理論研究として、人と動物の関係論と軍事環境問題・社会運動論を批判的に検討し、動物、環境・基地問題、社会運動という3つの問題系を総合的に捉える理論的枠組みを構築した。 その成果は、主に、人間と動物の倫理的な関係構築の問題として、一般向けの講演、国内の研究会での口頭発表、および学術論文として公開した。また、調査地へのフィードバックを兼ね、普天間基地と辺野古基地建設予定地の地域住民や地元大学生を集め、ジュゴン・基地問題の意見交換会を主催した。基地被害や基地公害など、様々な基地問題解決のための住民団体との勉強会を組織した。
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