研究課題/領域番号 |
17K13595
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研究機関 | 国立民族学博物館 |
研究代表者 |
相島 葉月 国立民族学博物館, グローバル現象研究部, 准教授 (40622171)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | グローバル化 / 文化ナショナリズム / モダニティ / 教養 / 都市中流層 / エジプト / ポストコロニアル / スポーツ |
研究実績の概要 |
本研究課題の目的は、現代中東におけるグローバル化の広がりと民衆的ナショナリズムの興隆の接点を、社会人類学的な視座より探求することにある。都市中流層が抱くグローバル社会や海外移住への憧れとエジプト国民としての誇りの関係性を空手家コミュニティ(指導者・競技者・父兄)の事例より考察する。制度的な政治にとらわれない日常生活におけるナショナリズムの展開の様相を参与観察を通じて分析することで、グローバルな潮流とネイションの境界の接点およびスポーツ実践における個と社会の関係性の解明を目指している。 平成29年度は、2月にフランスとエジプトで3週間程度の臨地調査を実施した。1970年代よりパリ在住の日本人空手家と面会し、フランスにおける空手道の歴史や空手家コミュニティの現状に関するインタビューを行った。中東・北アフリカからの移民を多数受け入れていることを反映して、空手教室にもアラブ系の子供が多く、熱心に稽古を行っていることが確認できた。カイロでは空手教室での参与観察に加え、エジプト伝統空手道協会会長の葬儀に参列して聞き取り調査を実施した。 今年度は昨年度まで行った研究課題の成果発表を行う機会に多く恵まれた。日本発祥の格闘技に関する研究会(5月3日、バース)とアメリカ人類学会の格闘技に関する企画セッション(12月2日、ワシントンDC)に加えて、研究代表者が企画した文化のグローバル化に関するワークショップ(2月10日、パリ)で研究発表を行った。11月10日にはオクスフォード大学セントアントニーズカレッジにおいて、エジプトの都市中流層にとって空手実践はグローバル社会の潮流にのる試みであるという趣旨の招待講演を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
・研究成果の発信については、計画以上に進展している。口頭発表が非常に好評であったことから、今後は論文として成果をまとめたい。 ・研究会や学会への参加が続いたことにより、臨地調査の期間が短縮された。例年よりも滞在期間が短かったものの、エジプトは政情不安を脱しつつあることから、非常に良質な聞き取り調査を実施することができた。 ・グローバル化と民衆ナショナリズムについて論じている先行研究のレビューが遅れ気味である。
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今後の研究の推進方策 |
・エジプトの首都カイロに6週間とパリに10日間滞在し、空手家コミュニティに関する臨地調査と文献収集を実施する。 ・口頭発表を行った論文を論文として仕上げて学術誌に投稿する。 ・社会理論や社会人類学の関連分野の先行研究レビューを行う。 ・アラビア語文献のデータベースを活用し、エジプトメディアによる空手道に関する報道の収集と分析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
・平成29年度人間文化機構若手研究者海外派遣プログラムにより10月2日~12月21日までマンチェスター大学に客員研究員として派遣されたため、エジプトでの調査期間を予定よりも短縮する必要が生じた。 ・独立形成基盤支援が交付されたものの、3ヶ月に渡り本務機関を不在にしたため、予定していたデータベースの購入作業に遅れが生じた。
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