研究課題/領域番号 |
17K13595
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研究機関 | 国立民族学博物館 |
研究代表者 |
相島 葉月 国立民族学博物館, グローバル現象研究部, 准教授 (40622171)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 身体 / 社会階層 / エジプト / 教養 / 美意識 / 新自由主義 / 空手道 / モダニティ |
研究実績の概要 |
本研究課題は、ネイションを束ねる指標の一つとしてスポーツ実践に着目し、現代中東におけるグローバル化の潮流とナショナルな境界の接点を、エジプトの空手家コミュニティに関する民族誌的調査を通じて探求している。日常生活の中でナショナリズムが実践される様相を把握するために、空手道の練習や競技会における参与観察や聞き取り調査、マスメディアやSNSのコンテンツ分析を実施した。コーチと選手及びその父兄と言った空手道に関わる人々が、どのように個としての欲求と、社会の期待との折り合いをつけているのかを、臨地調査とデジタル素材を組み合わせたマルチサイテット・エスノグラフィーによって描き出す ことを目指した。 新型コロナウィルスの感染拡大が続く中、7月23日から8月8日にかけて東京オリンピックが開催された。オリンピック関係者を一般社会から徹底隔離する「バブル方式」が採用されたことから、東京を訪問したエジプトの空手ナショナルチームへのインタビューを実施することができなかった。エジプト人空手家が2つのメダルを獲得したことにより、エジプトメディアやSNSでの反響が大きく、ナショナリズムが実践する場面を考察することができた。 エジプトの空手家コミュニティの動向を探るために、AskZad Digital Library(アラビア語文献データベース)を利用した資料収集を実施した。また、これまで収集した民族誌的データを分析するにあたり、カポエラや太極拳に関する先行研究よりグローバル化する身体文化とネイションの境界を考察する理論的枠組みを模索した。 エジプトで空手がグローバルスポーツとして普及した背景や、社会階層とスポーツ実践に関する論文及び講演を通じて研究成果を発表することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
・中東とスポーツのグローバル化については概ね順調に進んでいる。中東における日本発祥の格闘技の普及をグローバル化の潮流と合わせて論じた共同研究会の成果を公開するにあたり、Minpaku Anthropology Newsletterに特集を組んだ。 ・エジプトの空手家コミュニティの変容を、新自由主義政策に端を発したポストスポーツとして論じる試みは概ね順調に進んでいる。本論文については、今年度の日本文化人類学会年次大会で発表した。来年度は論文として仕上げたい。 ・都市中流層のスポーツと社会階層に関する言説については概ね順調に進んでいる。 ・中東における日本文化のグローバル化については概ね順調に進んでいる。本論文は論文集に所収された。 ・グローバル化と民衆的ナショナリズムの関係性については隣地調査での裏付けが必要である。今年度も海外出張が難しかったため、新聞やSNSなどデジタル素材を利用してデータを収集し、分析を進めた。
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今後の研究の推進方策 |
・AskZad Digital Libraryを利用して、エジプトメディアの空手道に関する報道を分析したい。 ・エジプトの空手実践をポストスポーツの理論的枠組みで分析する論考をまとめたい。 ・日本と中東の文化交流とグローバル化についての論文集の出版提案書を作成し、編集作業に入りたい。その一章としてグローバル化とナショナリズムについての論考を仕上げたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの感染拡大が続いたことにより、国内外の出張を自粛したため、旅費を次年度に繰り越すこととなった。
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