期間延長を経た最終年度にあたる2021年度は、これまでの研究成果に基づき、本研究の目的である、グローバル化という今日的な状況の下で生じた法現象の説明・分析に有用であるような概念モデルを、「制度理論」と呼ばれる理論枠組に準拠するかたちで設定する作業の完成を試みた。具体的には、研究の進捗が遅れた2020年度の計画を大幅に引き継ぎ、以下の三つの研究を実施した。 ①まず、初年度より取り組んでいる、ニール・マコーミックが提唱した新しい類型の「制度理論」を応用する形で、グローバル化により生じた法現象の説明・分析のためのモデルの案出に努めた。具体的には、ヨーロッパ統合を念頭において案出されたそのモデルの応用を、近時に展開されている別系統のアプローチからの議論と対比しつつ検討した。 ②次いで、昨年度に引き続き、法概念モデルの設定の基礎を提供する「制度理論」につき、その従来の主唱者たちが提示する議論の検討に取り組んだ。具体的には、サンティ・ロマーノが提唱した古い類型の理論に着目し、近時に英訳が刊行されたことで活発化している英語圏での議論も適宜参照しつつ、その現代的な含意を取り出すことに努めた。 ③加えて、本研究と密接に関連するものとして、グローバル化という今日的な状況における、「制度理論」の知見を踏まえた望ましい秩序のあり方についての検討を行った。具体的には、マコーミックがヨーロッパ統合の文脈で援用していた「立憲主義」という概念をグローバルな平面に応用する近時の試みを応用する試みに着手し、英語論文として公表した。
|