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2017 年度 実施状況報告書

地方自治における住宅コミュニティの位相:日英米の比較研究

研究課題

研究課題/領域番号 17K13599
研究機関神戸大学

研究代表者

板持 研吾  神戸大学, 法学研究科, 准教授 (20632227)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2021-03-31
キーワード英米法 / アメリカ法 / イングランド法 / 不動産 / 住宅 / 団体 / ガバナンス
研究実績の概要

アメリカにおける住宅コミュニティについての従来からの研究を補充しつつ公表に向けた総括に取り組むとともに、イギリスにおける類似の法制度についての基礎的な研究を開始した。
アメリカについては、住宅コミュニティにおける共用財産の使用等にかかる法的規律を扱ってきた従来の研究を拡大し、ヨリ広くコミュニティ内部のガヴァナンスという視点から追加研究と検討を行った。また我が国における所有者不明土地問題への対応の文脈から、住宅および住宅コミュニティそれ自体の維持にかかる諸問題に関心を広げ、対象を拡大することとした。未だ成果の公表には至っていないが、アメリカの不動産法はそれ自体我が国法学からとっつきにくいとされてきたことに鑑み、インフラ整備を兼ねて概説を公表した。
イギリスについては当初研究計画を超える進度で、不動産法にかかる基礎的調査を開始した。アメリカにおけるcommon interest communityに相当する制度としてcommonholdという制度が導入されたものの利用状況は芳しくなく、昔ながらの賃貸借(leasehold)形式での住宅コミュニティ形成・運営が実際上メインであるようである。
嬉しい誤算として、我が国の所有者不明土地問題に関する研究グループに参加することとなり、その関連で英米の物権法・不動産登記法の総ざらいをすることになった。その中で本研究にも示唆を与える諸問題群と実際の対応例を知ることとなった。多くはいまだ検討中の「萌芽」に過ぎない段階にあるものの、本研究との相乗効果は高いと見込まれ、期間内にできる限り消化して取り込むことにしたい。
海外の研究者とのネットワーク形成も順調に進んでおり、特に新規開拓をしているイギリスの研究者とのコンタクトに成功している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

次の2つのイレギュラーを加味しても、総合的には当初の計画から大きくは外れない進度と言える。
第一のズレとして、英米物権法・不動産登記法の総ざらいをすることになったこととの関係で、予定よりも早くイングランド不動産法について基礎的調査に及んでいる。その限りで当初計画における第2年度・第3年度に主として取り組む予定であった内容に既に食い込んでいると言える。(進度を早める要素)
第二のズレとして、当初計画ではアメリカ法の追加調査として現地での聞取り調査を実施する予定であった。これは実施できておらず、その結果、これを基にして公表する予定であった成果についてもまとめるのが遅れている。(進度を遅らせる要素)
以上のほかは概ね予定通りであるが、特筆すべきは次の通りである。①現地調査を必要としないアメリカ法の追加調査は順調である。②アメリカ法の総まとめに着手しており、上述の概説論文が既公表であるほか、ヨリ個別的な住宅コミュニティのガヴァナンスについて2018年6月初めの比較法学会にて報告を行う(その後論文として公表する)予定である。③業績の別の一部を2018年6月末の日米法学会でも報告予定であり、その後論文として公表する。④イギリス法の人脈構築は順調であり、特にオックスフォード大学のブライト、ゲツラ、カートライトの三教授と関係を構築できたのが大きい。

今後の研究の推進方策

基本的に当初計画通り研究を進めていくが、本務校との関係で2018年度末から在外研究の機会を得ることとなった。これは当初計画との関係ではイギリス法研究を深めるまたとないチャンスであるので、イギリスでの長期滞在と集中的な研究活動を実現したい。現にそのための調整に着手している。
これが首尾よく実現した場合、効率の面からも、アメリカ法および日本法に関する研究はやや後景に退くこととならざるをえない。それゆえ、アメリカおよび日本については在外研究開始前にできる限り進めておきたい。特に、既にやや遅れてしまっているアメリカでの現地調査については2018年度半ばに実現し、暫定的な形であったとしても一旦公表できる成果にまとめたい。
2019年度以降は上記の通りイギリスでの在外研究(実現できれば)にとりわけ集中して取り組む時期となる予定であり、若干の研究計画上の順序入替えはあるものの、予定通り進めていく。その際、本研究課題を在外研究の主たるテーマの一つとし、本科研費からも集中的に予算を投下していきたい。

次年度使用額が生じた理由

当初予定との関係で2つのズレが生じている。総合して残額(繰越額・次年度使用額)が生じているが、第二の事情に起因するところが大きい。
1) 物品費が当初予定より高額(および高割合)である。この理由は予定より早くイギリス法の文献調査を開始したために、文献購入にかかる費用が予定よりもかかっているためである。そのため、次年度以降にはこのような支出は(少なくとも相対的に)減少する見込みである。
2) 旅費および人件費・謝金が使われていない。これは当初予定していたアメリカでの現地調査を後回しとしてしまっていることによる。そのため、次年度以降に当該調査を実施することにより、むしろ2年度目以降には(単年度で見ると)これら費目が当初予定よりも高額(高割合)となる見込みである。
初年度である平成29年度には上記の通り、物品費の過剰と旅費および人件費・謝金の過少という現象が生じているが、研究期間全体では均されていく見込みである。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (2件) (うちオープンアクセス 2件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] アメリカの「規制による収用」を巡る最近の動向 : 合衆国最高裁Murr v. Wisconsin 判決2018

    • 著者名/発表者名
      板持研吾
    • 雑誌名

      神戸法学雑誌

      巻: 67(4) ページ: 187-218

    • DOI

      10.24546/81010252

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] アメリカ不動産取引法概説2017

    • 著者名/発表者名
      板持研吾
    • 雑誌名

      神戸法学雑誌

      巻: 67(3) ページ: 203-253

    • DOI

      10.24546/81010050

    • オープンアクセス
  • [学会発表] アメリカの「規制による収用」を巡る最新状況2017

    • 著者名/発表者名
      板持研吾
    • 学会等名
      神戸大学公法研究会

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公開日: 2018-12-17  

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