研究課題/領域番号 |
17K13600
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
山口 亮介 中央大学, 法学部, 准教授 (80608919)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 日本法制史 / 日本法史 / 蘭学 / 近代法 / 法概念 / 基礎法学 / 法制史 / 法史学 |
研究実績の概要 |
今年度の前半期は前年度に引き続き日蘭辞書や翻訳文献等各史料の細目、執筆・翻訳者、オランダ語を中心とした史料原典の判明分、各史料記述内容の同タイトル史料群との異同等の整理作業を行う基礎作業としての史料蒐集作業(史料複写・筆記)を武田科学振興財団杏雨書屋、津山洋学資料館、国立国会図書館古典籍資料室等を中心として行った。 また、これによって得られた法学関係のテキストのうち、年度後半期には津田真道訳『泰西国法論』の稿本における翻訳上の着眼点及びそこで用いられた訳語の背景にある前近代の東アジアや近世日本をめぐる法や秩序にかかわる観念の利用のあり方についての考察を行った。この作業の成果を津山洋学資料館の洋学研究専門誌に投稿し、掲載された(山口亮介「『泰西国法論』稿本他にみる西洋法認識の東洋的前提--司法・治道・仁政」(『一滴』・第26号・2019年))。こうした研究を通じて、本研究全体の具体的な考察を行う視座として、蘭学者の西洋概念の学習と日本国内の諸観念との緊張関係という観点だけではなく、漢学の素養を通じた東アジアの秩序に関わる諸概念との結びつきについての検討視角を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は前年度に積み残していた史料調査に比較的想起に目処を立てることができたことに加え、研究実績の概要でも言及した通り、論文執筆を通じて西洋法等の認識の前提となる東洋の学問や思想の基盤についての検討の視座を得ることができた。一方でオランダ語原典についての検討には時間を要している。これについては論文執筆と並行しながら着実な実行を期したい。
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今後の研究の推進方策 |
平成31(令和元)年度においては、これまでに蒐集した史料の整理作業を踏まえて、史料紹介や論文執筆に本格的に着手することを通じて、研究課題に即した成果公表の準備を進めていきたい。具体的には①蘭学者宇田川榕菴・宇田川興斎による法典翻訳テキストと原法典との対照を通じた近代法上の市民や権利に関わる概念の翻訳に関する論考を法制史学会の記念論集(査読有)に投稿するとともに、②本研究で得られた史料の概要を紹介する紹介記事を所属機関の紀要に発表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が発生した理由として複写史料の製本にかかる費用が当初見通しよりも抑えられたことが挙げられる。具体的には当初個別の冊子史料ごとに製本を予定していたところ、分量がまちまちであることや関連する史料をまとめて製本することで参照性を向上させることが判断したため、製本にかかる費用を大幅に減額できたことによる。尤も、こうしたコスト削減の可能性を確認できたのが年度末近くであったため、残額の利用は翌年度に廻さざるを得なかった。この次年度使用額については、追加の史料調査にかかる複写代金に利用したい。
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