研究課題/領域番号 |
17K13602
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研究機関 | 神戸学院大学 |
研究代表者 |
辻村 亮彦 神戸学院大学, 法学部, 准教授 (30547823)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 司法史 / 開港地 / 函館 / 裁判所 / 開拓使 |
研究実績の概要 |
開始年度となる平成29年度は、本研究の第一の柱となる明治初期函館における司法関係資料の収集・整理と分析を中心に実施した。 第一に、2017年8月と2018年3月の2回にわたって北海道立文書館所蔵の「開拓使文書」の調査を行い、1874年の函館裁判所設置以前の開拓使所管時代の司法関係資料の構造と所在把握に努めた。その結果、(1)開拓使の裁判の現場で作成された「裁判文書」は函館裁判所設置後に同裁判所に移管され、現在は函館地方裁判所に所蔵されていること、(2)開拓使と司法省等の間でやりとりされた難事件の裁判や法令解釈に関わる伺・指令および各種司法行政に関わる「司法行政文書」は開拓使文書として北海道立文書館に所蔵されていること、を確認した。 第二に、上記二回の史料調査において1869年から1874年までの(2)「司法行政文書」の主要部分について写真撮影・複写を行い、開拓使函館支庁における「司法」の形成過程の分析を行った。中でも、外国人関係訴訟において開拓使と外務省の間で交わされた文書および1874年の裁判所設置に至る過程において開拓使と司法省、太政官の間で交わされた文書に着目し、開港地かつ北方経営の要所という函館の持つ特殊性と「司法」の形成の関係性について分析を進めた。 なお、本研究と関連して、海港都市神戸の昭和初期の法実務に関する共同研究を実施し、研究会において小報告を行った。渉外関係と近代日本の「司法」形成という問題において共通しており、本研究にも有益な示唆が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
地理的・日程的問題から北海道立文書館での調査の機会が限られた上に、同館所蔵の「開拓使文書」が膨大で全容把握に当初想定より時間を要したことから、史料の撮影、分析に困難が生じた。この点については、「開拓使文書」の詳細目録を入手したことから、平成30年度以降研究の遅延は解消の予定である。 加えて、函館地方裁判所にある「裁判文書」原資料の調査が行えなかったことから、平成29年度中に実施を計画していた「裁判文書」の分析が非常に部分的なものに留まっている。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は以下の方針で研究を推進する。 第一に、平成29年度に撮影・複写した開拓使文書中の「司法行政文書」の分析をさらに進め、外国交易と北海道開拓の交錯地点である函館における「司法」制度整備の過程をより明らかにしていきたい。 第二に、平成29年度に十分に行えなかった「裁判文書」の調査と分析を本格化させ、近世近代移行期の民刑事の裁判のあり方を実証的に明らかにしていきたい。 これらの研究成果について年度内に研究会等において小報告を行い、論文として公表していく計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度以前に本研究に関連して複写した紙資料について、スキャナを購入して研究補助者にスキャンを依頼する計画であったが、平成29年度中に予算に見合ったスキャナを発注することができず、予定していたスキャニングが行えなかったため、次年度使用額が発生した。そこで、方針を転換して、スキャナ購入を取りやめ、外部業者にスキャニングを一括して委託することにした。平成30年度の助成金は、積み残しとなった資料スキャニングの外部委託費、文書館等での資料調査の旅費、資料複写費、図書費、文房具費として使用予定である。
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