2019年度末から始まったコロナ禍などによる研究の遅延により、当初の3年間の研究期間を2度にわたり延長し、2021年度まで本研究を継続することになった。 最終年度となる本年度は、昨年度までに引き続き本研究の第一の柱となる明治初期函館における司法関係資料の収集・整理と分析を中心に続行し、2019年12月に行った研究会報告を踏まえ、開港地・函館や札幌における裁判所の設置過程に関する論文を執筆し、公刊した。この中で、開港地であった函館においては、司法省と開拓使の共働により、渉外関係事件の迅速かつ公正な処理の必要性から、明治7年には早くも裁判所が設置されたのに対し、開拓使の本庁が置かれた札幌においては、司法事務の司法省ヘの早期移管を求める開拓使と、人口僅少かつ寒冷地のため費用対効果が見合わないとして移管に消極的な司法省との間で対立が続き、政府が一旦決定した明治12年での裁判所設置は棚上げとなり、結果的に開拓使が廃止された明治15年初めにようやく裁判所の設置をみたことを明らかにした。明治前半期の北海道は「内地」への編入の途上であり、「内地」並みの司法制度の導入が遅れた中でも、開港地であった函館では例外的に「内地」並みの裁判所の早期設置が実現し、幕末に決定した函館開港が司法制度の導入、拡充に一定のインパクトを持ったことが示された。 本研究の第二の柱である新潟における司法の形成、展開については、新型コロナウイルスの感染拡大により資料調査が実施できなかったため、残念ながら研究成果の公刊には至らなかった。。
|