研究課題/領域番号 |
17K13604
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研究機関 | 小樽商科大学 |
研究代表者 |
齋藤 健一郎 小樽商科大学, 商学部, 准教授 (60756881)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 経過規定 / 経過措置 / 時際法 / 時間的適用範囲 / 附則 |
研究実績の概要 |
平成29年度は、日本法を中心に、一定の法分野を対象として、主に附則に置かれる経過規定を整理・分類することを通じて、法令の経過規定の実務上の立法指針の研究を行った。 研究対象とした法令は多岐にわたる。自作農創設特別措置法の改正法、行政事件訴訟法等の訴訟法、公職選挙法、借地借家法、身元保証法、民法家族法、租税関係法令、公害防止事業費事業者負担法などの経過規定の分析を通じて、経過規定の中でも最も紛争を生じさせやすい「遡及効」の概念について、立法上の規定例や、判例・学説の総合的な研究を行った。これにより、判例では手続法と実体法を区別していること、実体法については不遡及が原則であること、実体法に関して遡及効を認める場合には「この法律の施行前に生じた事項にも適用する」という経過規定が置かれるとともに、この場合には施行前にすでに効力が生じた事項に対してであっても遡及効が及ぶこと、また、遡及効を制限する場合には「旧法によって生じた効力を妨げない」という経過規定が置かれること、判例上の遡及効の概念においては〈法律関係の形成〉を基準としており、過去・既存の法律関係に影響を及ぼす場合には遡及効があると解されること、などを明らかにした。 また、昨今の法令の経過規定としては、国家公務員退職手当法の改正法、道路運送車両法に係る告示の改正、再生可能エネルギー特別措置法の改正法、建築基準法上の既存不適格制度、鉱業法の改正法、道路交通法の改正法、動物愛護法、道路運送法の改正法などの経過規定の分析を通じて、経過規定をめぐる問題の現代的意義を実例に則して示した。 なお、規制行政に関する主要な法令を対象とする経過規定の網羅的な分析(制定当初から全ての経過規定の網羅的分析)を現在行っており、そこでの立法指針の解明については平成30年度において引き続き研究を継続する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日本法の中の多様な経過規定を分析し、立法実務上の指針や傾向を整理した点で、横断的な調査・分析を行うことができた。特定の主要法令の経過規定の網羅的分析については現在継続中であり、予定よりも時間を要しているが、成果をまとめる目処はついている。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、比較対象であるフランス法の研究を行う。特に、経過規定あるいは法令の時間的適用範囲に関するフランス法における学説上の理論モデルの分析を行う。また、日本法については、特定の主要法令の経過規定の網羅的分析を継続する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画を一部変更し、海外調査のため旅費として多く使用した一方で、データベースの利用及び図書の購入計画を若干変更したため、次年度使用額が生じた。翌年度において、フランス法関連の図書の購入に充てることとする。
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