研究課題/領域番号 |
17K13605
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
御幸 聖樹 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 准教授 (20634009)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 司法権 / 権力分立 |
研究実績の概要 |
前年度に引き続き、令和元年度も本研究の関連分野について研究を進めた。すなわち、本研究は司法権という概念が紛争の観念的解決を図ることに尽きるのか(訴訟手続)、それとも当事者の権利義務・法的地位が事実上実現されることまでをも含んでいるのか(執行手続)を整理・分析するものである。そして、本来であればそれらの手続について考察を進めていくべきところ、その手掛かりとして、アミカス(amicus curiae)についての研究を行うとともにその成果物として論文を発表した。 アミカスとは、訴訟当事者ではない第三者が広く裁判所に対して意見を提出する手続(日本には制度としては未だ存在しないが、アメリカやイギリスなど諸外国には見られる。)であり、裁判所が立法事実を顕出することに資するものの、このような制度を許容することで司法権の前提とする当事者主義が切り崩されるとの批判がなされている。他方、司法権の役割として法宣言を重視すると、訴訟当事者や裁判所が知りえない情報を裁判所に認識させることができるアミカスは有用なものと評価されることとなる。すなわち、アミカスはあくまで訴訟手続においてなされるものであるが、そのような訴訟手続(特に上級審で重要となる。)の場においても権利義務の実現や法的地位の確認を求める訴訟当事者が一定程度後退し、いわば裁判においては未だ観念的にしか想定されないはずの第三者が現れる手続が認められていることは、本研究にも重要な視座を与えるように思われたのである。 なお、本研究の本来的な考察対象に関わる判例として、諫早湾干拓紛争に関わる令和元年9月13日集民262号89頁が出された。そのため、同時並行的に同判例の研究も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
上述の通り、令和元年度はアミカスについての研究が主たるものとなり、かつ、それに関する大量の文献を調査する必要があったため、本来的な研究対象との関係では遅れた。ただ、アミカスについては司法権とは何かを検討する際に避けて通れないものであったとも思われ、本研究を進めるうえで不可欠なものであった。
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今後の研究の推進方策 |
本来であれば令和元年度が最終年度であったが、研究期間を1年延長し、次年度が最終年度となった。現時点(2020年5月)において、新型コロナウイルスの影響により、従来とは異なる研究環境を強いられており、それがどこまで続くかが不確定であるが、次年度はこれまでの研究の締めくくりとして研究成果を発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
上述の通り、令和元年度は周辺事項についての研究を行ったため、本来的な研究対象についての研究を行うためにも次年度に回した方が有効と考えた。
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