研究課題/領域番号 |
17K13607
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
山田 哲史 岡山大学, 社会文化科学研究科, 准教授 (50634010)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 法律の留保 / グローバル化 / グローバル公法 / 刑事手続の法律による規制 |
研究実績の概要 |
まず、グローバル化時代における、法律、あるいはそれを生み出す役割を担う議会の機能について、研究者従来の研究を振り返り、情報をアップデートする(1)とともに、その発展として、グローバル化時代における公法、あるいは憲法、そして、それらを検討対象とする公法学や憲法学の可能性について検討を深め、一定のモデル、あるいは方向性を提示した(2)。(1)については、法学専門雑誌の議会制特集への寄稿の招待を受け、論稿を公表している。また、(2)についても、平成29年度に、大まかな見取り図を一般向け書籍に寄稿していたが、平成30年度は、2本の学術論文にまとめるとともに、英語で国際ワークショップにて報告を行った。一般への発信という観点では、これらの内容を所属機関の広報活動である記者会見の場を用いて紹介した。さらに、国際法研究者との交流、意見交換も従来より継続して行っており、そこでの成果は本研究の深化・発展に大いに役立っているところである。 次に、刑事手続の法律による規律という面についても、平成29年度に続いて研究を深めた。刑事訴訟法、刑事学の研究者との交流、意見交換を継続したほか、行政法の一般原則の見直しを通じて、この問題についての検討を行った論稿を1本公表したほか、行政法学に加えて憲法学における人権保障論にも議論を波及させる形で、権利侵害を中核に据える法律規制設計論の再検討を行う研究を行い、これについても、論稿を1本公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要欄にも記載の通り、憲法学、行政法学、国際法学、刑事訴訟法学にまたがる形で、当初の研究計画に沿って、基本的には順調に検討を進めることができている。ただし、法律による刑事手続規制論については、狭義の刑事手続に限定されない射程を持つ議論であることが判明し、研究の視野や題材を広げる必要を認識し、これに対応する形で、当初想定していたよりも成果、業績の仕上げが若干遅れているところもある。 また、平成30年度は、口頭報告という形では、外国語による発信を行うことができたが、やはり当初の計画に比して、外国語での発信が不十分な点があることは否めず、この点についても改善の必要を感じるところである。 このように、研究の進捗自体には基本的に問題はないものの、その発信方法を中心に問題はないわけではなく、「おおむね順調」との評価に至った次第である。
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今後の研究の推進方策 |
まずは、グローバル公法論について大まかな見取り図はこれまでに提示できたので、比喩的に言えばこれの具体像を描くような、つまり、具体的事象を踏まえた実証研究を進めたいと思っている。もっとも、実証と理論は研究の両輪をなすので、古典的な公法理論の再検討など、歴史的なものを含めた、理論的検討もこれまで以上に深化させる予定である。この点については、国際的に見てもグローバル公法論をリードする論者が多く存在するマックスプランク研究所の所在地でもあるとともに、伝統的に公法学の重要な研究拠点でもある、ドイツのハイデルベルクに2019年度後半より長期滞在する予定であるので、研究の深化と加速化が見込まれる。また、このような国際的な交流の場を得られるので、英語、ドイツ語による発信も増やしていく予定である。 法律による刑事手続規制論については、早めに現在進めているドイツを参照した研究を完結させ、従来行っていた、アメリカを参照した研究との対比、双方の研究の見直しの段階に入ることを予定している。これについても、研究の進捗に合わせて、日本語、英語、ドイツ語で順次積極的な成果の公表を行なっていきたいと考えているところである。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定書籍(洋書)の刊行が遅れ、購入手続を予算執行期間内に完了できない見込みとなったため。 使用は、次年度において早急に当該書籍の購入の手配を進め使用する。
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